化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

原子によるX線の散乱と原子散乱因子

原子によるX線の散乱

原子は正の電荷をもつ原子核と、負の電荷をもつ電子から構成されている。

一方でX線は電磁波であるため、振動する電場をもつ。そのため、原子にX線を照射するとX線の振動する電場が荷電粒子を振動させる。この振動された荷電粒子が波源となって新たなX線が生じる。

そのため、原子にX線を照射するとX線が散乱されたように見える。

このとき生じるX線の[強度は荷電粒子の振動の加速度が大きいほど強くなる。そのため、質量が小さい電子はX線によって強く振動し、散乱されたX線も強くなるが、質量が大きい電子はX線を照射しても、あまり振動しないため散乱されたX線の強度も小さい。

よって、原子によるX線の散乱を考える場合、原子の電子によるX線の散乱のみを考えることが多い。

原子散乱因子

電子は原子核のまわりに存在しているため、原子の電子分布を球対称と考えることができる。このとき原子にX線を照射すると、散乱されるX線の強度は原子散乱因子f(s)に比例する。この原子散乱因子f(s)は、静止状態の原子中の位置rにおける電子密度を\rho_0(r)、虚数をi、散乱ベクトルをsとすると、次のように表される。

f(s) = \int  \rho_0(r) \exp (-i s・r ) dv

この積分は全空間について行う。

また散乱ベクトルsは入射するX線の波数ベクトルをk_0、散乱するX線の波数ベクトルをk_sとすると、次のように定義される。

s = k_s - k_0

ここでいう波数ベクトルは、 X線の進行方向を向き、大きさが波長の逆数のベクトルである。