化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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再結晶と再結晶による物質の精製について

再結晶とは

結晶性物質が溶液や融体からふたたび結晶として析出する現象を再結晶という。また、このための操作のことも再結晶 (recrystallization) という。

再結晶は結晶性物質を適当な溶媒に溶解し、温度、濃度、溶媒の組成、共存する他の物質などによる溶解度の差を利用する。具体的には、高温度の飽和溶液を冷却する方法、溶媒を蒸発させ濃縮する方法、他の溶媒を加え溶解度を低下させる方法などがある。

固相反応における再結晶

金属や合金では、融点以下の温度での固相反応によって再結晶が進行する場合があある。例えば、冷時加工した金属などを加熱した際に、加工時に加えられたひずみがなくなることで結晶が成長する。これも再結晶もしくは焼きなまし再結晶とよばれる。

また、固相反応による再結晶の例として、岩石の組織と鉱物組成が地殻の内部での物理化学的条件に適合するように再構成される変成作用による再結晶などもある。

再結晶による物質の精製

再結晶は物質の精製のために利用されることが多い。他にも大型の単結晶を作製する目的で行われることもある。

温度による溶解度の差を利用した再結晶による精製では、固体混合物を一度、再結晶させる物質はあまり溶かさず、取り除きたい不純物はよく溶かす溶媒に温度の高い状態で溶解させる。その後、温度を下げることで目的物は固体として析出し、不純物は溶液に残ることで精製ができる。

また、不溶性の不純物が存在する場合は、再結晶の操作の途中の温度が高い状態で、不溶性物質を濾過によって取り除く操作が行われる。この操作は熱濾過といわれる。

最後の結晶の生成の過程では、ゆっくり温度を下げると結晶が大きく、きれいに析出する。一般的には、室温に放置して温度を下げるが、必要な場合には、室温まで温度が下がった後に、氷などで冷却しさらに結晶の析出量を増やす場合もある。

また、大きな結晶を作製するために、温度を下げる前に結晶化させる物質の小さな結晶を入れる手法がある。この場合、小さな結晶を中心に結晶化がはじまる。この小さな結晶のことを種結晶ともいう。

再結晶は固体物質の精製においては有力な手法であるが、例えば塩化ナトリウムと水では、塩化ナトリウムの水に対する溶解度が温度によって大きく変化しないため、塩化ナトリウムの再結晶による精製は困難となる。