化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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ゾルゲル法の解説

ゾルゲル法とは

 コロイドなどの微粒子が溶液中に分散したゾル状態から、流動性のなくなるゲル状態を経て、固体物質を得る合成方法をゾルゲル法 (ゾル-ゲル法、sol-gel method)という。セラミックスやガラス、金属酸化物などの合成に用いられる。

一般的に粒子が液体中にコロイド状に分散したものをゾルという。

また、コロイド状態(濃縮されたゾル)や重合した状態の骨格構造中に溶媒が含まれている半固体状態のものをゲルという。ゾルゲル法は固体材料となる前に、このゾル状態とゲル状態を経ることが利点として活用されている。

例えば、ゾルゲル法の合成途中の流動状態の際に、膜や繊維状などの形状付与が容易であることが利用されている。

また、ゾル調製前の原料の混合、ゾル状態での複数のゾルの混合、ゾルへの他の金属イオンの添加など複合多成分系材料の合成方法が複数あり、複合多成分系材料の合成にも利用されている。

ゾルゲル法の順序

ゾルゲル法で、固体を合成するには、まず適当な溶媒を用いて反応物のゾルを調製する。ゾルの調製には、不溶性の固体を分散させる手法と溶媒と前駆体の反応によってコロイドをつくる手法の2つがある。不溶性の固体を分散させる手法では、酸化物や、水酸化物を水に入れ、pHを調節して沈殿せずに分散状態を維持する場合が多い。溶媒と前駆体の反応によってコロイドをつくる手法では、水中に金属アルコキシドを入れ、アルコキシドを加水分解させることで、酸化物のコロイドを作製する場合が多い。

作製されたゾルは、放置や撹拌、加熱処理などによってゲルにする。

このゲルを加熱することで、最終的な生成物が得られる。この加熱処理の過程で、溶媒が除去され、またアルコキシドや炭酸塩などの陰イオンが分解され酸化物をつくり、固体の構造が再構成され結晶化が起こる。

 ゾルゲル法の歴史

ゾルゲル法が合成法として確立されたのは1950~1960年代である。これは、この時期に直径1~1000 nmの小さな粒子群であるコロイドが、化学的に均質性の高いものであることが確認されたためである。

初期のゾルゲル法は、ケイ素のアルコキシドを加水分解して作製ゾルから石英ガラスを作製するために研究されていた。しかし、当時の手法では、作製したガラスのひび割れを防ぐために、乾燥時間が1年以上も必要であった。