化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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含浸法と吸着法・ポアフィリング法・蒸発乾固法・単純湿潤法・スプレー法の解説

含浸法

金属粒子を触媒として用いる場合、酸化ケイ素 (シリカ) や、酸化アルミニウム (アルミナ) などの耐熱性を有する酸化物粒子上に金属粒子が分散したものが用いられる。

このとき使用される 酸化物粒子のことを担体という。この担体の役割は、金属粒子の溶融 (シンタリング) を防ぎ、金属粒子が分散されている状態を保つことである。

また、この担体が金属粒子と相互作用することで、触媒活性を向上させるという報告例もある。

この金属粒子を触媒に担持する方法の一つとして含浸法がある。

一般的に、含浸法とは触媒となる金属やその金属塩などが分散している活性成分溶液中に、担体粉末を加えて担体粉末を含浸し、その後、混合溶液を乾燥させ、焼成や還元を行う方法である。

含浸法の種類

含浸法も含浸や乾燥の操作によって、さらに区別される。ここでは、吸着法、ポアフィリング法 (pore-filling法)、蒸発乾固法、単純湿潤法 (incipient wetness法)、スプレー法を紹介する。

吸着法は、飽和吸着量以下の活性成分溶液を、全て担体上に吸着させる方法である。

ポアフィリング法は、担体の細孔面積と同じ容積の活性成分溶液を担体に加え、全てを吸着させる方法である。

蒸発乾固法は、触媒に担体粉末を含浸し、湯浴上などで加熱、撹拌しながら溶媒を蒸発させ、蒸発乾固した後で、焼成などを行う方法である。実験室では、この蒸発乾固法が最も簡単であることから、利用されている例も多い。蒸発乾固法は、金属の担持量の設定が容易であるが、金属粒子の分散状態を制御することは難しい。

単純湿潤法 (incipient wetness法)は、担体の細孔容積を測定し、その容積に等しい量の触媒分散溶液をビュレットなどによって担体上に徐々に滴下したあとで、乾燥、焼成する方法である。単純湿潤法は金属粒子の分散状態をある程度制御できる。一方で、金属の担持量を増加させることは難しい。

スプレー法は、担体を入れた容器を減圧し、分液漏斗などから含浸液を噴霧する方法である。スプレー法では、担体の細孔中まで、ほぼ均一に金属分散溶液を含浸できる