導体と不導体
物質は電気を通すかどうかで、大きく3つに分けることができる。電気を通す物質は導体 (conductor) といわれる。また電気を通さない物質は不導体、絶縁体 (insulator) といわれる。また、電気伝導性が導体と絶縁体の中間である物質は半導体といわれる。
導体と不導体は気体、固体、液体などの物質の物理的な状態とは関係がない。
また、導体は電場に応じて電気を運ぶ電荷担体が電子である電子伝導体と、イオンであるイオン伝導体がある。他に、電子とイオンの両方が電荷担体である混合伝導体がある。
電子伝導体
電子伝導体が電気を通す理由は自由電子をもつためである。電子伝導体としては、金属が知られている。また無機酸化物や硫化物も電子伝導体であるものがある。金属や無機酸化物、無機硫化物及びほとんどの半導体は、共有結合によって結晶格子を形成するために必要な電子の数と比較して、過剰な電子や欠乏した電子が導電性の由来である。
特に電子が過剰な半導体はn型半導体、電子が欠乏した半導体はp型半導体といわれる。
p型半導体では欠乏電子を正孔やホールということも多く、正に帯電した正孔が動くことで導電性が表れるという表現をする場合も多い。
また有機物にも導電性を示すものがある。鎖や環などに単結合と二重結合を交互にもつ有機物では、特異な電子的性質が現れ、高い電子伝導性を示す。この電荷担体は特にπ電子とよばれる。
π電子が電荷担体である電子伝導体としては、グラファイトがよく知られている。また、導電性ポリマーもπ電子が電荷担体であり、カチオン型のポリピロールなどが知られている。
結晶性有機物塩である有機金属にも、π電子が電荷担体となり電気伝導性を示すものがある。2-ビニルピリジンのポリマーが過剰のヨウ素と反応してできるタール状物質の電荷移動化合物などが知られている。
イオン伝導体
イオン伝導体は、陰イオンまたは陽イオンの動きによって電気伝導性を発現する。
水などの溶媒に塩、酸、塩基などを溶かした電解質溶液はイオン伝導体の身近な例である。
陰イオンや陽イオンの動きが電気伝導性に寄与する電解質溶液と類似しているものとしてイオン液体がある。このイオン液体は溶融塩であり、無機塩は一般的に高い融点をもち、その高い温度でのみ電気を通す。
固体イオン伝導体は、通常の場合、1種類の可動性イオン種を含む物質である。例えば高温下のジルコニア(ZrO2)では酸化物イオン(O2-)が結晶格子中を移動する。室温下でも、銀ルビジウムヨウ化物(RbAg4I5)では銀イオン(Ag+)が移動する。
混合伝導体
正に帯電したイオンと自由電子からなるプラズマは、電子とイオンの両方が導電性に寄与する。
他にも、液体アンモニウムに溶けた金属ナトリウムも、電子とイオンの両方が導電性に寄与する。この液体中にはナトリウムイオンと溶媒和電子を含む。そして、これら両方が可動性をもち、電荷担体として機能する。
金属パラジウムに溶解した水素も、電子と水素イオンの移動の両方が電気伝導性を担う。