化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

超伝導体とマイスナー効果、BCS理論について

超伝導体について

超伝導体とは電気抵抗が0でありマイスナー効果を示す物質である。この電気抵抗が0になった物質のことを完全導体ともいう。しかし、完全導体と超伝導体は同じ意味ではないため注意が必要である。

超伝導の他に超電導と書く場合もある。ちなみに中国語では超導と書く。

超伝導と電気抵抗について

低温で物質の電気抵抗が0になる現象が超伝導(superconductivity)の特徴である。

超伝導を示す金属も他の金属と同じように、電気抵抗は温度が低下していくと減少していく。そして、ある特定の温度で相転移が起こり、電気抵抗が急激に下がり0になる。この温度のことを臨界温度(critical temperature)という。

ちなみに、銅線として使われるように金属をよく通す銅でも、直径1 mm、長さ100 mで1Ωの抵抗をもつ。こういった金属では、自由電子が電気を運ぶ。一方で金属結晶中では金属原子(陽イオン)が熱によって振動している。この結晶格子の振動が電気抵抗の由来である。そのため、金属の温度が上がると格子の振動が激しくなることで、自由電子の動きが邪魔されやすくなり、電気抵抗は上がる。一方、金属の温度が下がると、格子の振動はおだやかになり電気抵抗は下がる。しかし超伝導はこの温度を下げていったときの電気抵抗の低下とは違い、臨界温度で急激に電気抵抗が下がる。

 

マイスナー効果について

超伝導体を磁場の中に入れると、超伝導体内部に外部磁場を完全に打ち消すような渦電流が流れる。 これにより、超伝導体内部に入ろうとする磁場を完全に排除し、内部の磁場を0に保とうとする。この超伝導体が示す性質のことをマイスナー効果という。このことは、超伝導体が完全反磁性であることを示す。

マイスナー効果により、超伝導体の円盤の上に小さな磁石を置くと、磁石の磁場によって円盤内に渦電流が発生する。そのため、磁石は宙に浮く。

BCS理論について

超伝導に関する理論は、バーディーン(Bardeen)、クーパー(Cooper)、シュリファー(Schrieffer)によって確立された。そのためこの理論は頭文字を取りBCS理論といわれる。

一つの電子Aが金属陽イオンの格子の間を通過するとき、格子は電子に引かれることで少し近づきながら振動する。このとき、この空間は少し正に帯電する。すると、別の電子Bが引きつけられる。電子Bは電子Aと逆向きの速度をもつ。また、電子Aと電子Bの運動量の和は0になる。こうして、二つの電子が格子振動(フォノン)を通して引き合ってクーパー対が形成される。この電子対の相互作用は、常温では熱運動によって打ち負かされる。
電子はフェルミ粒子である。よって、電子は一つの量子準位を二つ以上の電子が占めることはできない。しかし2個の電子によってクーパー対が形成されると、ボーズ粒子として振る舞う。そのため、すべての電子対が同じ運動エネルギーと運動量をもつようになる。これにより、電子間に摩擦が無くなり、電気抵抗は完全に0になる。

ちなみに金属は常温で良導体である。これは金属は電子と格子を構成するイオンとの相互作用が小さいため、フォノンを通したクーパー対の形成が起こらない。そのため、絶対零度付近まで温度を下げても超伝導にはならない。