ギブズの自由エネルギー
反応が自発的に進行するかどうかは、熱力学的にはエンタルピー変化とエントロピー変化によって考えることができる。
エンタルピーは一定の圧力下で吸熱反応が起きる場合に、吸収される熱量である。熱が放出される発熱反応では、エンタルピー変化は負となる。
エントロピーは、ある物質や反応系の乱雑さや不整合さの尺度である。
一般的に、系はエネルギーが低く、乱雑さが増加する方向に変化する。つまり、エンタルピーが小さく、エントロピーが大きくなるように変化する。
このエンタルピーとエントロピーを組み合わせた効果は、絶対温度(K)をとすると次の式によって、ギブズ(Gibbs)の自由エネルギーで表される。
ギブズの自由エネルギーは系のエネルギーの尺度である。そして、その系は自発的にエネルギーの低い状態へ向かう。
温度一定の場合、系のエネルギー変化は、次の式で表される。
が負の場合には、化学反応は自発的に起こり、が正の場合には、化学反応は逆方向に起こる。また、が0の場合には、平衡となる。
よって反応は発熱反応のようにエネルギーが放出され、エンタルピー変化が負である反応が起こりやすく、エントロピーが増大し、エントロピー変化が正である反応が起こりやすい。
上の式からわかるように、エンタルピーもしくはエントロピーの一方だけでは、系で反応が自発的に起こるかどうかわからない。
例としてNH4Clが水に溶解する場合を考える。NH4Clのような塩の水への溶解は吸熱反応である。そのため、エンタルピー変化だけを考えると溶解は自発的に起こらない。しかし、溶解によるエントロピー変化が正であり、エンタルピー変化よりも大きいため、溶解が自発的に進行する。
標準ギブズエネルギーと平衡定数
標準状態( = 1 atm、 = 298 K、単位濃度)における物質1 molの熱力学的量として標準エンタルピー、標準エントロピー、標準ギブズエネルギー(標準自由エネルギー)がある。これらには次の関係が成り立つ。
また、を気体定数とすると、は反応の平衡定数と次の関係が成り立つ。
上の式は次のようにも表すことができる。
上の関係式を用いると、反応の標準ギブズエネルギーから、平衡定数を計算することができる。