化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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放射光の次世代光源・回折限界光源

放射光の光源の輝度

放射光は輝度が高い光源といわれる。イメージとしては、通常の実験室の光源が電球であれば、放射光の光源は、レーザーポインターのようなものである。

この光源の輝度は電子ビームのエミッタンス(角度×大きさ)に依存し、低エミッタンス光源であるほど、輝度は高くなる。現在使用されているアンジュレータよりもさらに輝度が高い光源を、次世代光源、回折限界光源という。回折限界光源では、輝度は飽和する。

回折限界光源

光の大きさ\Delta xと運動量pについて、プランク定数をhとすると不確定性原理によって次の関係が成り立つ。

\displaystyle \Delta x \times \Delta p_x \ge \frac{h}{4}

\Delta p_xは、発散角を\Delta \thetaとすると、\Delta p_x = p \times \Delta \thetaの関係がある。

また、波長を\lambdaとすると、ド・ブロイの式より次の関係が成り立つ。

 \displaystyle p = \frac{h}{\lambda}

そのため、次の関係が成り立つ。

\displaystyle \Delta x \times \Delta \theta \ge \frac{\lambda}{4}

つまり、波長\lambdaの光に対して、光の大きさ\Delta xと発散角\Delta \thetaの積が、回折限界光源より小さな光源をつくることはできないということになる。

また、上の関係式の等号が成立する条件の光源を回折限界光源という。そのため、回折限界の条件は波長(エネルギー)に依存する。

回折限界の放射光光源

 放射光光源の場合、光源のエミッタンスは光と電子ビームのコンボリューションで表される。

光のエミッタンスは光の大きさを\Delta x、光の発散角を\Delta \thetaとすると、次のように表される。

\displaystyle \Delta x \times \Delta \theta \ge \frac{\lambda}{4}

電子ビームのエミッタンス\epsilonは電子ビームの大きさを\Delta x_e、電子ビームの発散角を\Delta \theta_eとすると、次のように表される。

\epsilon =  \Delta x_e \times \Delta \theta _e

よって放射光光源のエミッタンスは次のようになる。

\Delta X \times \Delta \Theta = \sqrt{(\Delta x)^2 + (\Delta x_e)^2} \times \sqrt{(\Delta \theta)^2 + (\Delta \theta_e)^2}

 \displaystyle = \Delta x \sqrt{1+ \left( \frac{\Delta x_e}{\Delta x} \right) ^2} \times \Delta \theta \sqrt{1+ \left( \frac{\Delta \theta_e}{\Delta \theta} \right) ^2}

また、次の近似が成り立つときを回折限界の放射光光源という。

 \Delta X \times \Delta \Theta \simeq \Delta x \times \Delta \theta