化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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合金と置換型固溶体・侵入型固溶体・金属間化合物について

合金について

合金(alloy)とは、異なる金属元素が混じり合った物質である。溶けた金属を混ぜ合わせてから冷却してできる固体であり、金属の性質を示す。一般的に合金は電気陰性度が同程度である電気的に陽性の2種類の金属から生成することが多い。

合金は一方の金属の原子の間にもう一方の金属の原子がランダムに分布している均一な固溶体の場合と一定の組成と固有の構造をもった化合物の場合がある。

例えば銅中に亜鉛を含む黄銅や銅中に亜鉛及びニッケルを含む青銅などが合金としてよく知られている。

固溶体は置換型固溶体と侵入型固溶体に分類することができる。

置換型固溶体について

一般的に次の3つの条件が満たされると置換型固溶体が生成する。

  1. 両元素の原子半径が15%以内で一致している
  2. 両元素の純金属の結晶構造が同じである
  3. 両元素の電気的陽性の程度が似ている

2.は、2種の原子間に働く力の方向性が互いに合っていることを意味する。また3.の条件を満たさない場合、化合物となる可能性が高い。

例えばナトリウムとカリウムは、構造は両元素の純金属の結晶構造はbcc構造であり、化学的性質も似ているが、ナトリウムの原子半径はカリウムの原子半径より19%小さく固溶体は形成しない。

銅とニッケルは、構造は両元素の純金属の結晶構造は同じ構造であり、化学的性質も似ており、原子半径の差も2.3%であるため、純粋なニッケルから純粋な銅までの全組成領域で固溶体を形成する。

侵入型固溶体について

金属とその格子の隙間に入るようなホウ素や炭素、窒素などの小さい原子との組み合わせで侵入型固溶体が形成されることが多い。侵入型固溶体の場合は、合金ではない金属元素と非金属元素の組み合わせも多い。このような小さい原子が母体となる固体に入る場合は、金属の元々の結晶構造は維持され、電子の移動やイオンの生成もない。

炭化タングステンのように金属原子と侵入原子とが簡単な整数比になる場合は化合物であるとみなされる。一方で、小さい非金属原子が金属の隙間にランダムに分布している場合、侵入型固溶体もしくは不定比化合物とみなされる。

金属間化合物について

金属元素同士は電気陰性度が近いにもかかわらず、2種の金属間の固溶体には化合物とみなす物質がある。例えば、融解した金属の混合物を冷却すると、一定の構造をもつ相を形成することがある。これらの物質の構造は成分金属の構造とは無関係である場合が多く、このような相は金属間化合物といわれる。

金属間化合物は母相と異なる物理的、化学的性質を示す。

金属間化合物の構造には、化合物の形成に原子価電子数が重要な役割を担う電子化合物、母相が密に詰まった結晶構造をもつラーベス相化合物、電気陰性度が大きく金属間で生成する電気化学的化合物などがある。

電子化合物は価電子濃度が+3/2や+21/13、+7/4など特定の数値に一致する場合に、特有の金属間化合物構造をとる。そこで、代替金属や新機能金属を探索する場合には、同じ結晶構造をもつ電子化合物が利用される。