自然界での14Cの生成について
14Cはβ-壊変によって14Nへと変わる。14Cは地表から10 km以上上層の大気である成層圏にて生成される。このときに起こる核反応は中性子をn、陽子をpとすると次のように表される。
14N + n → 14C + p
この反応に関わる中性子は宇宙線によって生成されるものである。宇宙線には太陽から来る太陽宇宙線と銀河からくる銀河宇宙線があり、これらの宇宙線を一次宇宙線という。一次宇宙線が大気中の原子と核反応を起こしてカスケード的に生成するものを二次宇宙線という。こういった宇宙線による核破砕反応によって大気中で中性子が生成し、その中性子の大半は14Cの生成に寄与する。
宇宙線の核反応の寄与により大気中で14Cが生成する反応は、14N以外にも考えられる。同位体存在度で考えると14Nの次に16Oが多く存在するが、反応のQ値を考えると、16Oから14Cが生成する反応は起こりにくいことがわかる。そのため、14Nから14Cが生成する反応のみを考えて問題はない。
14C年代法の原理
14C年代法は14Cのみに着目した年代測定法である。14Cは生成した後にCO2として、成層圏から対流圏へと移動する。その後、CO2中の14Cは炭酸同化作用によって植物中で有機物に取り込まれる。その後、動物の体内に移行する場合もある。
14Cの半減期に対して充分に長い時間が経過すると、14Cの生成速度と壊変速度は等しくなる。そして安定炭素同位体である12Cや13Cと比較したときの14Cの個数は一定となる。
しかし、植物や動物が死亡した場合は、外界との炭素の交換も停止することとなる。この場合物質中の14Cの濃度は時間の経過によって減少していく。外界との炭素の交換が止まってから経過した時間をtとし、を試料中の14Cと14Cの同位体比、を生物が死んだときの14Cと12Cの同位体比とすると次の関係が成り立つ。
この式より年代は
14Cの濃度は14Cが壊変するときに放出されるβ線を測定する方法と14Cの数を直接測定する方法がある。
14Cのβ線計数法
比例計数管には、気体状で試料を導入する。この気体としては、アセチレンやメタンが用いられる。
そこでまず試料を燃焼や酸との反応させることで、試料中の炭素を二酸化炭素に変え、アンモニアと反応させることで炭酸アンモニウム溶液にする。この溶液に塩化カルシウムを加えることで、炭酸カルシウムを沈殿物として析出させる。この炭酸カルシウムからアセチレンやメタンを合成し、比例計数管の中に導入する。こうすることで試料の純度を高めることができる。
こうして得た気体を比例計数管に封入し、電圧を印加した後、プラトーが生じる電圧でβ線の測定を行う。
14Cが崩壊する際に生じるβ線のエネルギーは最大で157 keVでありβ線の中では弱い。そのため、測定装置のまわりを鉛や鉄などで囲み遮蔽したり、反同時計数法などの工夫を行いバックグラウンドを低下させる。
反同時計数法とは、試料を封入した計数管の周りに複数の計数管を配置して測定を行う方法である。14C由来のβ線は弱いため、試料を封入した計数管のみで計測され、周りの計数管では14C由来のβ線は計測されない。
一方で宇宙線などはエネルギーが高いため、全ての計数管で宇宙線の影響は計測される。この、試料を封入した計数管とその周りの計数管で同時に計測されたものは計測値としないことで、バックグラウンドを低くすることができる。
14Cの個数計数法
14Cの個数を直接計測する方法として、加速器質量分析法がある。加速器質量分析法は加速器でイオンを加速し、質量分析をする方法である。加速器としては、タンデム型ヴァン・デ・グラーフ加速器が利用されることが多い。
加速器質量分析法では、試料中から抽出された炭素をグラファイトなどの固形炭素に変換して測定する。このグラファイトなどにセシウムイオンを照射し、イオンに変換すると同時に分子イオンを分解して、+3価の炭素として検出系へと送る。12C3+と13C3+はファラデーカップで個数を計数し、14C3+は重イオン検出器で個数を計数する。