シンチレーションカウンターとは
原子や分子が放射線によって励起され、エネルギー的に励起状態となると、基底状態もしくは低励起状態へと戻る。このとき、原子や分子から電磁波が放出される。このような蛍光を発する物質のことをシンチレーターという。このシンチレーターを利用して、放射線を測定する検出器をシンチレーションカウンターもしくはシンチレーション検出器という。
固体のシンチレーターを利用する場合の検出器を固体シンチレーションカウンター、液体のシンチレーターを利用する場合の検出器を液体シンチレーションカウンターという。
固体シンチレーションカウンターについて
固体のシンチレーターとして、約0.1 mol%のタリウムを含むヨウ化ナトリウムの結晶が使われ、γ線の計測に利用されることがある。ヨウ化ナトリウム以外には、α線の計数に硫化亜鉛が利用される。他にはアントラセンや、蛍光物質を含むプラスチックなども固体のシンチレーターとして使われる。
タリウムを含むヨウ化ナトリウムはγ線の測定に利用される。ヨウ化ナトリウムは潮解性をもつため、ガラスや石英でできた窓のついたアルミニウムの容器に入っていることが多い。ヨウ素は原子番号が大きくγ線のエネルギーを吸収する。タリウムは活性化剤として働き波長410 nmの蛍光を発する。この蛍光は微弱なため、光電子増倍管を用いて増幅し、定量的に測定を行う。
光電子増倍管では、放射線によって発生した蛍光を光陰極に導入し、光電効果によって蛍光の強さに対応した光電子を放出させる。光電子は+70~100Vの電圧をかけられた電極に衝突し、電極からは3~4倍の電子が放出される。これを10~14段程度の電極の数の分だけ繰り返すことで、電子が増幅される。その後、パルス電流として計測する。
液体シンチレーションカウンターについて
液体シンチレーションカウンターでは、液体のシンチレーターに試料を溶解や乳化、懸濁させ測定を行う。特に低エネルギーであるβ線やX線の計測に利用される。
液体シンチレーションカウンターは3Hや14Cなどの測定に利用される場合が多い。他には、放射性気体試料を溶媒に溶解させることで測定することができる。空気中のラドン濃度の測定はラドンをトルエンなどの溶媒に溶解させ、222Rnの測定によって行われる。
まず最初に、測定対象である放射性核種を含む物質をトルエンやキシレンなどの溶媒に溶解させる。次にシンチレーターとして、発光効率を上げる働きをする第一溶質と放出された光の波長を長波長側にシフトさせる第二溶質を加える。第一溶質としては、p-テルフェニル(TP)や2,5-ジフェニルオキサゾール(PPO)などが用いられる。これらの溶質から放出される光の波長は320~389 nmであり、通常の光電管が再高感度を示す波長よりも短い波長である。そのため第二溶質によって光を長波長側へシフトさせる。第二溶質とは1,4-ジ[2-(5-フェニルオキサゾール)]ベンゼン(POPOP)などが用いられる。
液体シンチレーターは蛍光効率が高く、試料に対する親和性が高い必要がある。そのため液体シンチレーターに加えて、測定試料の種類に対応した溶媒への溶解を補助する溶解補助剤などをまとめたカクテルや液体シンチレーションカクテルといわれるものが市販されている。
液体シンチレーションカウンターによる計測では、シンチレーターに含まれる不純物などによって発光量が減少するクエンチングという現象が起きる。不純物によるクエンチングは、不純物が放射線から受けたエネルギーの伝達を阻害するために起きる化学クエンチングと、不純物が溶液を着色させることで、蛍光の一部が吸収されてしまうために起きる色クエンチングがある。クエンチングが起きている場合は、その補正が必要となる。