化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

金属酸化物のバンドギャップと伝導帯の関係:Scaifeの報告

金属酸化物の半導体 金属酸化物などの半導体は、伝導帯と価電子帯がある。そして、この価電子帯と伝導帯の間の電子状態密度が0であるエネルギー領域をバンドギャップという。 金属酸化物の価電子帯は、主に酸素の2p軌道によって構成されていると考えられる…

フォノンと格子振動・フォノンのエネルギー

フォノンと格子振動 フォノンとは、固体を構成する原子の振動である格子振動を、エネルギーをもつ粒子と考えたものである。つまり、フォノンは格子振動の準粒子である。また格子振動を量子化したエネルギー量子がフォノンであると説明されることもある。 フ…

電気浸透流:キャピラリーに電圧を印加すると生じる流れ

電気浸透流とは 電気浸透流 (electro-osmotic flow, EOF) とはキャピラリーの両端に電圧を印加したときの溶媒自体の流れのことである。特にキャピラリー電気泳動において起こる。 キャピラリーとして用いるフューズドシリカキャピラリーにアルカリ性の溶液を…

準粒子:量子化された振動や波動を粒子とみなす

準粒子とは 準粒子とは、相互作用をもつ多粒子の集団による運動の中で、振動や波動が量子化され、粒子のように振る舞うため、粒子のように扱うことができるもののことである。 数学的には多粒子系の集団による運動は、空間的に広まった場として考えることが…

格子比熱と格子比熱の式

格子比熱 格子比熱とは、固体の比熱のうち格子振動の寄与する部分のことである。 固体の比熱を考える場合、固体の内部エネルギーが温度に対してどのように変化するかを考える。この固体の内部エネルギーは格子振動のエネルギーと電子系のエネルギーに分けら…

数式に登場するexpについて

公開している記事のなかでも、例えばオイラーの公式 のようにを使っている。このは、大学の教科書や講義などでは当然のように使われているが、振り返ると高校では習ったことがなかったので、ここで説明をしておく。 数式に登場するexpについて 自然対数の底…

ウィスキーを水割りすると香り高くなる論文の解説動画の紹介

www.youtube.com 最近はYou Tubeに動画を投稿するYouTuberやVTuberが増えてきて、小学生の憧れにもなっていると聞きます。 しかし、私は研究の内容や化学に関する動画を投稿する人はまだまだ少ないなと感じています。 さて、最近、有機化学論文研究所を運営…

ハイエントロピー合金とその特徴

ハイエントロピー合金とは ハイエントロピー合金もしくは高エントロピー合金 (High entropy alloy, HEA) とは、合金を構成する元素が5成分以上であり、その5成分以上の多成分がほぼ等原子組成比で、そして単相固溶体を形成する合金である。従来の合金の多く…

熱力学の第2法則:エントロピー増大の法則・クラウジウスの原理・トムソンの原理

熱力学の第2法則:エントロピー増大の法則とは エントロピーとは乱雑さの程度を表す量である。 そして、熱力学の第2法則はエントロピー増大の法則ともいわれ、膨大な数の粒子が関与しているときには、エントロピー(乱雑さ)が減少する方向には現象は進まな…

エントロピー:系の乱雑さの程度を表す量

エントロピーとは エントロピー (entropy, ) は熱力学的状態量の一つであり、系の乱雑さ、もしくは無秩序さの程度を表す量である。エントロピーが大きいほど乱雑さが大きいということができる。 エントロピーは、1865年にR.J.E. クラウジウス (Clausius) に…