金属酸化物の半導体
金属酸化物などの半導体は、伝導帯と価電子帯がある。そして、この価電子帯と伝導帯の間の電子状態密度が0であるエネルギー領域をバンドギャップという。
金属酸化物の価電子帯は、主に酸素の2p軌道によって構成されていると考えられる。そのため、金属の種類が異なるとバンドギャップと伝導帯のエネルギー準位は変化するが、価電子帯のエネルギー準位はほとんど変化しないという仮説がたてられている。この仮説のもととなっているものがScaifeの報告である。
Scaifeの実験結果
Scaifeは、金属酸化物もしくは金属の複合酸化物のバンドギャップとフラットバンドポテンシャルについて報告を行った(1)。
Scaifeは金属酸化物もしくは金属の複合酸化物のバンドギャップをx軸に、フラットバンドポテンシャルをy軸にプロットした結果を報告している。その結果が、次に引用している図である。
引用:D.E. Scaif, Solar Energy, 25, 41-54 (1980)
引用している図中の● (黒丸) は金属酸化物のうち、d軌道が部分的に占有されていないものを表す。つまり、d0、d10状態をとっていることを表す。図中の ▲ (黒三角) は金属酸化物のうち、d軌道が部分的に満たされているものである。■ (黒四角) は陽極酸化により形成された金属酸化膜であることを表している。
また、引用している図中の直線は、傾きがの線である。ほとんどのプロットが、この傾きの直線上にのっていることがわかる。
n型半導体の場合、フラットバンドポテンシャルは伝導帯の下端のエネルギー準位よりも少し低いレベルに位置する。
そこで、フラットバンドポテンシャルが伝導帯の下端のエネルギー準位を示すと考えると、バンドギャップと伝導帯の下端のエネルギー準位が相関していることがわかる。
ここで価電子帯と伝導帯を構成する軌道について考えると、価電子帯は主に酸素の2p軌道によって構成されており、伝導帯は金属の軌道によって構成されていると考えられている。
そのため、図の相関は、酸素の2p軌道によって構成される価電子帯の上端の位置はほぼ一定であり、バンドギャップが広がると、その分だけ伝導帯の下端のエネルギー準位が上昇していることによると考えられている。
金属酸化物の半導体を光触媒として用いる場合、バンドギャップの大きさによって、利用できる光の波長が決まるため、この結果は半導体の材料選択などにおいて、重要な結果となっている。
参考文献
D.E. Scaif, Solar Energy, 25, 41-54 (1980)