化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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量子ドットの特徴、用途について

量子ドット・QDとは

量子ドット(quantum dot)、QDとは、ド・ブロイ波長程度の大きさの領域に電子を閉じ込めた0次π電子系のことである。また、直径が数nmの半導体ナノ粒子のことを量子ドットということがある。

これは半導体ナノ粒子のような三次元的な閉じ込めの起こる粒子では量子効果が重要になるためである。一般的に量子ドット中には10~10000個の電子が閉じ込められている。

量子ドットとよばれる半導体では、電子が小さい領域に閉じ込められると二つの効果が生じる。

一つ目はHOMO-LUMOエネルギーギャップがバルク結晶で観察される値から増加することであり

二つ目はLUMOの電子(HOMOの正孔)のエネルギー準位が箱の中の粒子の場合のように量子化されることである。

量子ドットの応用について

量子ドットは生体標識のための細胞の蛍光観察や赤外領域の光の検出器、センサー、レーザーなどの素子の作成に利用されている。

物質のバンドギャップを制御するときに、電子と正孔が小さい領域に捕らえられる量子閉じ込めという現象を利用することがある。

価電子帯における状態(HOMO状態)と伝導帯における状態(LUMO状態)との間の電子遷移はバンド間遷移といわれる。バンド間遷移の最小エネルギーはバルクの半導体と比べて、量子ドットでは大きくなる。
つまりバンドギャップは量子ドットの大きさの関数である。そのため、量子ドットの大きさを変えることによってルミネセンスを制御できるようになる。この効果を利用して、大きさの異なる量子ドットを機能化することで、単一の幅広い励起光でさまざまな量子ドット発色団を励起し、異なる発色を検出することで複数の被験物質を同時に検出することができる。そのため量子ドットが生物標識の発色団として利用されている。

量子ドット内で利用することができる量子化されたエネルギー準位は正味の運動量をもたない。そのためエネルギー準位間の遷移に運動量が変化する必要がなくなる。この結果、どの2つの準位でも、その準位間の遷移確率が高くなる。またバンド内遷移(LUMOバンド中の状態間電子の遷移やHOMOバンド中の正孔の遷移)の確率も高くなる。こういった強いバンド内遷移はスペクトルの赤外領域にあるため、赤外領域の光の検出器、センサー、レーザーなどの素子の作成に利用されている。