化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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部分モル体積についての解説

部分モル体積の必要性

例として、水(H2O)の体積をVとします。

体積VのH2Oと体積VのH2Oを混合すると、体積2VのH2Oとなります。

この、体積の加算性について、1 molあたりの体積(モル体積)で説明することができます。

しかし、エタノール(EtOH)の体積をVとして、体積VのH2Oと体積VのEtOHを混合すると、混合物H2O+EtOHの体積は2Vよりも小さくなります。

この、混合による体積の減少について、1 molあたりの体積(モル体積)では説明することができません。そのため部分モル体積を導入する必要があります。

部分モル体積とは

混合物中のある物質Aの部分モル体積とは大量の混合物に加えた物質Aの1 molあたりの体積変化のことです。

混合物中の成分の部分モル体積は組成によって変化します。これは成分Aと成分Bの混合物の場合、純粋なAから純粋なBへと変化するにつれて、各分子の環境が変化し、分子間に働く力が変化するためです。

 一般化するために、物質Jのモル体積について考えます。ある一般の組成において物質Jのモル体積V_Jは次のように表されます。

\displaystyle V_J = \left ( \frac{\partial V}{\partial n_{J}}  \right )_{p,T,n'}

下付きのn'は存在する他のすべての物質量を一定に保つことを表す。部分モル体積は、圧力、温度など他の成分の量をすべて一定にして物質Jの量を変化させたときの全体積のグラフの傾きです。

次に大量の混合物に物質Aと物質Bを追加した場合を考えます。混合物にAを dn_Aだけ追加し、Bを dn_Bだけ追加して混合物の組成を変化させた場合、混合物の全体積の変化は次のように表されます。

\displaystyle dV = \left ( \frac{\partial V}{\partial n_{A}}  \right )_{p,T,n_B} dn_A + \left ( \frac{\partial V}{\partial n_{B}}  \right )_{p,T,n_A} dn_B

この式は次のように書くことができます。

\displaystyle dV = V_A dn_A + V_B dn_B

AとBの量を増やしても、組成が一定に保たれている場合、混合物の最終体積は積分によって次のように計算することができます。

 \displaystyle V = \int_0^{n_A} V_A dn_A + \int_0^{n_B} V_B dn_B = V_An_A + V_Bn_B

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