化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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物理吸着と化学吸着の特徴について

吸着の分類

清浄な固体表面と気体分子(原子)が接触すると、固体表面原子と気体分子(原子)との相互作用によって表面に気体が吸着する。

この相互作用の仕方によって吸着現象は物理吸着(physisorption) と化学吸着(chemisorption) の2種類に分類することができる。

物理吸着について

物理吸着とは固体表面に原子や分子が吸着する現象のなかで、吸着の原因が主に気体分子と表面原子のファンデルワールス力 (van der waals相互作用) によるものである吸着のことである。その特徴は次のようなものがある。

・物質による特異性は少ない。

・吸着速度は早い。

・吸着熱は小さく、~20 kJ mol-1である。

・温度依存性は小さい。

・多層吸着も起こる。

・可逆的に脱離し、解離はしない。

通常、気体分子や蒸気からの吸着は発熱を伴う。この吸着熱は物理吸着では気体の凝縮熱よりやや大きい程度の~20 kJ mol-1である。

物理吸着では、電荷の交換などは行われない。物理吸着は速度が早く、温度依存性が小さい。これは化学結合生成のときのような活性化エネルギーが必要ないからである。また、物理吸着は可逆的に起こる。

吸着の駆動力はファンデルワールス力(van der waals相互作用)によるものであるため固体表面と直接接触していない2層目以上の層でも下層との相互作用が起きる。そのため、多分子層吸着も起きる。気体の飽和蒸気圧になると多分子層吸着は、その気体の凝縮(液化)へ影響する。

化学吸着について

化学吸着とは固体表面に原子や分子が吸着する現象のなかで、吸着の原因が化学結合生成や電荷移動相互作用によるものである吸着のことである。また、金属や金属酸化物などに化学吸着される気体分子や気体原子は多い。その特徴は次のようなものがある。

・物質による特異性が強い。

・吸着速度は遅い。

・吸着熱は大きく、数百 kJ mol-1である。

・温度依存性は大きい。

・単層吸着のみが起こる。

通常、気体分子や蒸気からの吸着は発熱を伴うが、化学吸着の吸着熱は非常に大きく80~400 kJ mol-1である。

化学吸着の速度は遅く、温度依存性が大きい。結合生成の活性化エネルギーをEとしたとき化学吸着は \exp \frac{-E}{RT}  に比例する。また化学吸着は非可逆的である。固体表面原子と吸着気体分子との化学結合生成が吸着の駆動力であるため、単分子吸着のみが起こる。