化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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大学の若手教員・若手研究者が待遇改善に声を上げないあたりまえの理由

大学の教員はもちろん、大学院生であっても、大学の若手教員の待遇が悪いという話を聞いたことがある人は多いと思います。例えば、長時間の労働や、研究以外の仕事や雑用、業務の増加や押しつけなどがあり、その影響で論文などの研究成果を出せてない人もいることでしょう。

その一方で、待遇が悪いのであれば、もっと声を上げて、自発的に待遇改善に対して努力すればいいのにと不思議に感じる人もいると思います。
ただ、若手教員が声を上げない、もしくは声を上げにくい点には、少し考えてみるとあたりまえの理由があります。

1. 多くの研究者が、任期付き・非正規の雇用である

最近は、助教であっても、任期付きであることが非常に多いです。明確に特任助教のように、特任といった言葉がついている場合も多いです。ポスドクであっても、ほとんどが任期付きです。

任期があるということは、数年後には所属している大学や機関から離れることが決まっているようなものです。(もちろん、任期付きで雇用されている研究者が、任期無しのポジションへ移ることもあります)
今のポジションでの待遇について声をあげて、待遇が改善したとしても、任期があるために、その恩恵を自分は多く享受することができない可能性が高くなります。

2. 評価で不利になる恐れがある

大学や研究者、学会などは、狭い業界です。そのため、大学の教授などには強い横のつながりもあります。一方で教員やポスドクは、次のポジションとしても、そういった教授などに採用してもらう可能性が高くなります。

もし、今の待遇で、特に教授などのシニア教員からの待遇や扱いについて不満があっても、そのことを主張した結果、業界内で悪い噂を立てられたり、業界内で干されるのではないかという恐れを抱くのは当然です。

また、教員の公募の中には、推薦書が必要になるケースもあります。そういった場合であれば、悪い評価などは書かれないように気を使ってしまうこともあるでしょう。

3. 研究など、別のことに自分の時間を使いたい

大学の教員も自身の研究や、もし指導している学生や担当している講義などがあれば、そういったことに時間を使いたいということは当たり前の心理です。むしろ研究や、学生の指導、教育などを行いたいから大学教員などの道を選んでいる人も多いはずです。

また、研究以外にも、次のポジションへの応募(要するに就活など)にも時間を使っている人もいます。

一方で、待遇改善を訴えるには、それなりの準備が必要で、時間や労力が必要になります。

どちらを優先したいのかは、当然、人によりますが、少ない時間を研究などに優先して使いたい人がいることも、予想できます。

さらに

さらに、アカデミアなどから見切りをつけて、企業などへ移っていく人もいます。そういった人はアカデミアの待遇をわざわざ改善しようとはしないでしょう。
むしろ、研究に本気で力を入れたいからこそ、海外の研究機関やアカデミア以外の企業などで研究している人もいるかもしれません。

また、大学に限らず若手研究者や若手教員の待遇が悪化している一方で、まだ日本では劇的な改善例などが出てきていないということも実情だと思います。

その一方で、日本の研究力を上げていくためや、日本人研究者の論文数を増やすためには、こういった若手の待遇などを改善していくことも不可欠だと思います。今の研究者はもちろん、将来の日本の研究者のために、アカデミアなどの当事者以外の人も声を上げていったり、盛り立てたりしていく必要があるのかもしれません。
また1つの大学などの単位ではなく、すべての大学が同じような変革が起こるような取り組み方も求められているのかもしれません。