熱力学で重要な"系"
熱力学では、系と、その系を決める境界を正しく考えておくことが重用である。
熱力学の系とは、注目する物理空間の任意の3次元領域のことをいう。通常は一度に一つの系だけを考え、これを系と略して呼ぶことが多い。他の部分は系の周囲となる。
境界とは、系を囲み、周囲から切り離すための、閉じた3次元の空間である。
境界の具体例として、2つの相の界面や、フラスコなどの容器の内側と外側を分けるガラス壁面などである。そのため、境界と物理的な表面が一致することも多い。
また、境界によって決められた系の大きさや形は、時間によって変化することがある。
以上の点から、系は3次元領域の任意の領域を選択することができるが、どの領域を選択して議論しているのかは、正確に把握をしておく必要があることが予想できると思う。
通常は、系とは3次元空間の一部であり、周囲との相互作用を通して、間接的にでなければ、影響を与えることができないものとして考える。
周囲とは、実験装置のような、私達が自由にパラメーターをコントロールすることができるものも含まれている。つまり実験者は、系の一部ではなく、周囲の一部であると考えることができる。また系を分割して取り扱ったり、系を組みわせて取り扱うことができる。
開放系と閉鎖系
時間の経過とともに、物質が境界を越えてどちらかに移動する場合には、その系は開いてる。これを開放系という。
逆に時間の経過においても、物質が境界を越えて移動しない場合には、その系は閉じている。これを閉鎖系という。
開放系の場合、物質は固定された境界を通過することや、空間に固定された物質の間を境界が動くこともできる。
断熱的な境界では熱の移動を許さない境界である。原理的には、完全遮熱、完全遮光壁で系を囲むと、境界が断熱であることを確認することが可能である。
隔離された系では、物質や熱、仕事を周囲と交換せず、系の質量と全エネルギーが時間とともに一定になる。
系と仕事
系が仕事をしないようにするためには、通常、系と周囲の環境との間で力が働いている場合がある。
例えば、熱的に絶縁された硬い壁の中に入っている機体は、それぞれの壁に力をおよぼす。そのため、壁は気体に等しい力と反対の力をおよぼしている。
孤立系は、重力場のような、一定の外場がかかっていることもある。
マクロとミクロ
古典的な熱力学では、分子や原子、イオンなどの粒子が複数集まった集合体の特性について考えることが多い。こういった側面は原子や分子などのミクロな視点に対して、物質のマクロな視点という
系の量的な特性とは、時間とともに変化するが、任意の瞬間には得的の値をもつ巨視的(マクロ)な特徴を表したものである。
参考文献
Thermodynamics and Chemistry - Second Edition
Howard DeVoe, University of Maryland
Publisher: Howard DeVoe
Thermodynamics and Chemistry - Second Edition - Open Textbook Library
本文献はCC-BYのライセンスが付与されています。