化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【物理化学】相と分留・蒸留の仕組みについて解説

明確な境界によって、他と区別される物質系の均一な部分を(phase)という。相が気体、液体、固体の状態であるのに対応して、それぞれ、気相液相固相と呼ぶ。

純物質の相を純相、2つ以上の成分を含む混合物の相を溶相という。

ただ1つの相からなるものを均一系もしくは単相系といい、2つ以上の相からなるものを不均一系、または多相系という。身近なものとしては、フレンチドレッシングは水相と油相にわかれるため2相系液体である。

分留・蒸留

沸点の異なる2種類以上の液体の混合物を加熱し、沸点の低いものから順に気化させて分離する操作を分留、または蒸留という。

ただし、混合している2種類の組み合わせによっては、分留すると高純度の1成分が得られる場合と、一定の組成の混合物が得られるものに区別できる。

横軸に成分の組成、縦軸に温度をとったグラフを3種類示す。ここではタイプ1、タイプ2、タイプ3と呼んで区別する。矢印は沸騰と冷却の操作を表す。

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二成分系の気相-液相の状態図

 

タイプ1の場合は、沸騰させ、気化と液化を繰り返す分留によって、高純度の物質Aが得られる。

タイプ2の場合は、沸騰させて液化させることで、分留によって、高純度の物質Cもしくは物質Dが得られる。

タイプ3の場合は、分留すると一定の組成の混合物が得られる。例えば、エタノールと水では96:4の混合物が得られる。

まとめると、揮発性物質の混合液体(水とアルコールなど)を加熱すると、その溶液の沸点に対応した割合の混合気体が発生する。その気体の混合物の割合が液体中の割合と異なる場合、気化と液化を繰り返すことで、異なる割合の混合液体を得ることができる。

混合液体の割合と発生する混合液体の割合が同じで、その沸点が純粋な各成分液体の沸点よりも低い場合は、蒸留によって、純粋な2つの成分に分離することはできない。