化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【化学演習&解答】塩素の同位体についての求め方(原子量・分子の種類・存在比・分子量)

塩素の同位体について考えよう

天然では、塩素原子は3517Clと3717Clの2種が存在する。そしてその存在比は3517Cl:3717Cl = 3:1である。

1: 塩素の原子量

2: Cl2の種類は何種類存在するか

3: 上の数種類Cl2の存在比

4: Cl2の分子量

上記の4つの量を求めましょう。

 

解答編

1: 塩素の原子量

原子量は原子の質量であり、原子質量単位(amu)/個の単位で表される量です。

そして各元素ごとに、それを構成する原子について原子量を求めるのですが、このクイズの塩素の同位体のように元素を構成する原子には2種類以上の種類があります。そこで原子量を求めるときは、存在比をもとに各原子の平均値を求める必要があります。

塩素は35Cl:37Cl = 3:1の個数比で存在しているので、塩素の原子量は次のような計算式で求めることになります。

 \displaystyle \rm{ 塩素の原子量= (^{35}Clの原子量) \times \frac{3}{4} +  (^{37}Clの原子量) \times \frac{1}{4} } 

各原子量は近似的に質量数とみなすことできるので、35Cl ≒ 35、37Cl ≒ 37となります。よって、下の式の計算結果から35.5が答えになります。

 \displaystyle 35 \times \frac{3}{4} +37 \times \frac{1}{4} = 35.5

2: Cl2の種類は何種類存在するか

35Clと37Clの組み合わせを考えると下の図のように2×2 = 4通り考えられます。しかし左から2番目の35Clと37Clの組み合わせと左から3番目の37Clと35Clの組み合わせはひっくり返すと重なり、同じ分子です。よって答えは3種類となります。

 

f:id:syerox:20210922153908j:plain

塩素分子の組み合わせ

3: 上の数種類のCl2の存在比

35Clと37Clは陽子数、電子数、電子配置は同じなので、結合力もほぼ同じと考えることができます。

そのため、Cl2の存在比はもとのClの個数比を反映した単純な確率計算で求めることができます。

f:id:syerox:20210922154855j:plain

塩素分子の存在比

注意する点は左から2番目の組み合わせと左から3番目の組み合わせは同じ分子という点です。

 \displaystyle \rm {^{35}Cl-^{35}Cl:^{35}Cl-^{37}Cl:^{37}Cl-^{37}Cl} =\displaystyle \\ \frac{3}{4} \times  \frac{3}{4} : \frac{3}{4} \times  \frac{1}{4} + \frac{1}{4} \times  \frac{3}{4} : \frac{1}{4} \times  \frac{1}{4}= 9:6:1

4: Cl2の分子量

Cl2の分子量は、上の3種類の塩素分子の分子量と存在比から計算することができます。

35Clと35Clの分子は分子量70

35Clと37Clの分子は分子量72

37Clと37Clの分子は分子量74

よってCl2の分子量は下の計算式で71と求められます。

 \displaystyle \rm{Cl_2の分子量}= 70 \times \frac{9}{16} +72 \times \frac{6}{16} +74 \times \frac{1}{16} =71