化学徒の備忘録

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塩化ナトリウムのマーデルング定数の近似値の計算

塩化ナトリウムのマーデルング定数の近似値の計算方法

塩化ナトリウムのマーデルング定数を近似的に求める。

ここでは第三近接イオンまでのマーデルング定数への寄与について考える。

まず、塩化ナトリウムの構造のCl-イオンを原点とする。また、最近接イオンとの距離をdとする。

このとき原点のCl-イオンの最近接イオンは(\pm d, 0, 0 )、( 0, \pm d, 0)、(0, 0, \pm d)に位置する6個のNa+イオンである。

Na+イオンの電荷は+1であるため、最近接イオンであるNa+イオンによるマーデルング定数への寄与は次のようになる。

\displaystyle 6 \times \frac{d}{d} = 6

次に、原点のCl-イオンの第二近接イオンは( \pm d, \pm d, 0)、( \pm d, \mp d, 0)、( \pm d, 0, \pm d)、( \pm d, 0, \pm d)、( 0, \pm d, \pm d)、(0, \pm d, \mp d)に位置する12個のCl-イオンである。このCl-イオンの原点からの距離は\sqrt{2}dとなる。

Cl-イオンの電荷は-1であるため、第二近接イオンであるCl-イオンによるマーデルング定数への寄与は次のようになる。

\displaystyle -12 \times \frac{d}{\sqrt{2}d} = - \frac{12}{\sqrt{2}}

次に、原点のCl-イオンの第三近接イオンは( \pm d, \pm d, \pm d)、( \pm d, \pm d, \mp d)、( \pm d, \mp d, \pm d)、( \mp d, \pm d, \pm d)に位置する8個のNa+イオンである。このNa+イオンの原点からの距離は\sqrt{3}dとなる。

Na+イオンの電荷は+1であるため、第三近接イオンであるNa+イオンによるマーデルング定数への寄与は次のようになる。

\displaystyle 8 \times \frac{d}{\sqrt{3}d} = \frac{8}{\sqrt{3}}

よって、最近接イオンから第三近接イオンまでのマーデルング定数への寄与は次のようになる。

 \displaystyle 6  - \frac{12}{\sqrt{2}} +  \frac{8}{\sqrt{3}} \simeq  2.134

ちなみに実際の塩化ナトリウムのマーデルング定数は1.748である。

このように計算を行っていくとマーデルング定数を近似的に求めることができる。

ただし、このように原点を中心とする球の半径を徐々に大きくするようにして、各距離にあるイオンからの寄与を求める方法では、収束値が得られないことが示されている*1。そのため、実際のマーデルング定数を算出するためには、計算方法に工夫が必要となる。

*1: David Borwein, Jonathan M. Borwein, Keith F. Taylor, Journal of Mathematical Physics 26, 2999 (1985); https://doi.org/10.1063/1.526675