化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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シャルガフの法則:DNAの塩基の残基数の経験則

シャルガフの法則 (Chargaff's rule)

シャルガフの法則とは、DNA中ではプリン塩基のアデニン (A) とチミン (T)の残基数は等しく、ピリミジン塩基のグアニン (G)とシトシン (C)の残基数も等しいという法則である。

それぞれの塩基に対応するアルファベットから、次のように表現されることもある。

A = T, G = C

シャルガフの法則はDNAが二重螺旋構造をとり、DNA中では塩基対はアデニン (A) とチミン (T)、グアニン (G)とシトシン (C)の間のみで形成されることによるものである。

このシャルガフの法則を利用することで、DNA中の塩基のうち、一種類の塩基の割合が分かると、残りの塩基の割合を求めることができる。

例えば、DNA中のアデニンの割合が20%である場合、チミンの割合も20%とわかる。その結果、グアニンとシトシンの割合の合計は100 - (20 + 20) = 60%となり、グアニンとシトシンはそれぞれ30%の割合で存在していることがわかる。

シャルガフの法則はDNAの二重螺旋構造の由来するものであるため、一本鎖のDNAでは当てはまらない。

シャルガフの法則とRNA

RNAは通常一本鎖分子であり、塩基組成には制約がない。そのため、RNAはシャルガフの法則に従わない。しかし、ウイルスの遺伝物質の二本鎖RNAはシャルガフの法則に従う。ただし、ウイルスの一本鎖DNAはシャルガフの法則には従わない。

シャルガフの法則の発見

DNAの構造を考えるとシャルガフの法則は当然のように思えるが、シャルガフの法則はDNAの構造が明らかになる前の1940年代にErwin Chargaffが発見した法則である。そして、シャルガフの法則はDNAの二重螺旋構造モデルに影響を及ぼした法則でもある。

Chargaffは、ろ紙クロマトグラフィーを利用したDNAの加水分解物の分離法や定量法を開発し、DNAの塩基組成がその生物に固有であることを発見した人物である。