化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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ブレンステッド酸点とルイス酸点について

酸点とは

固体酸において酸性を示す表面サイトのことを酸性中心(acid center)もしくは酸点(acid site)、酸性点(acidic site)という。

酸点のうち代表的なもとが2種類あり、酸性を示す表面のヒドロキシ基のことをブレンステッド酸点 (Brønsted酸点)、露出した表面金属イオンのことをルイス酸点 (Lewis酸点)という。

代表的な固体酸性を示す物質として金属酸化物が挙げられる。この固体酸は工業的にも重要であり、クラッキングやオレフィン異性化などの反応に利用されている。

ゼオライトの酸性

ゼオライトは代表的な固体酸触媒である。このゼオライトの固体酸性は骨格のAlの存在によるものである。ゼオライトの基本構造はSiを中心とする酸素四面体単位である。ただしそのうちSi4+がAl3+によって同型置換されている。そのため。骨格は負電荷を帯びていることになる。ゼオライトが合成された時点では、この負電荷はNa+などのイオンによって中和された塩のかたちで存在している場合が多い。

ゼオライトのブレンステッド酸点

SiとAl原子の比が5対1であるゼオライトのモルデナイトは、強酸によって処理することで、プロトン (H+) 型のゼオライトにすることができる。しかしながら、すべての陽イオンをプロトンに交換することは困難であり、さらに骨格のAlの一部が失われる脱アルミニウムも同時に起こる。

SiとAl原子の比が5対1よりもAlを多く含むゼオライトは、酸処理によって骨格の崩壊が起こる。そのため、NH4+で陽イオンをイオン交換処理した後に、焼成することで、NH3がガスとして脱離しゼオライトをプロトン型にする。ゼオライトをプロトン型にした場合、プロトンはAlとSiに架橋した酸素イオンに結合し、架橋ヒドロキシ基として固体表面に存在する。この架橋ヒドロキシ基がブレンステッド酸点である。

ゼオライトのルイス酸点

ブレンステッド酸点として存在している架橋ヒドロキシ基は、750 K以上に加熱するとH2Oとして脱離する。その結果、ルイス酸点が発現する。ルイス酸点の構造としては、H2Oが脱離した部分でのSi+がルイス酸点であると考えられていたが、(AlO)+のような化学種がルイス酸点として機能しているという考え方が有力になってきている。また、ルイス酸点の水和によってブレンステッド酸点が再生する。