化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

スペクトルの意味について

スペクトルとは

理科、科学、物理、化学などで、スペクトルはよく登場する単語です。辞書にもよりますが、意味は大きく2つです。

(1)複雑な組成をもつものを,共通の要素で分析し,配列したもの
(2)光を分解し,波長の順に並べたもの.

引用元:イミダス2018

 1 可視光および紫外線・赤外線などを分光器で分解して波長の順に並べたもの。

2 複雑な組成をもつものを成分に分解し、量や強度の順に規則的に並べたもの。

引用元:デジタル大辞泉

 波長の順番に並べたものと複雑な組成を成分に分解して並べたものの2つの意味があることがわかります。

つまり、まずグラフなどで軸が波長になっているものをスペクトルと呼ぶということです。

また、グラフなどで、ある成分で並べたものもスペクトルといいますが、この場合その成分の単語を使って〇〇スペクトルと呼ばれる場合が大半です。

スペクトルの意味の歴史的経緯

スペクトルという語はラテン語のspectareに由来し、元来は突然出現するものとか、予期しないのに出現するもの、早くいえばお化けのようなものを意味した。

引用元:日本大百科全書(ニッポニカ)

スペクトル自体の語源はラテン語にあるようです。そして、このスペクトルを科学的な用語として現在使われている意味ではじめて記載した人物がアイザック・ニュートンだと考えられています。

ニュートンの『光学』(1704)第1巻第1部命題2「太陽光は異なった屈折性をもつ光線で構成されている」の一節を抄訳してみよう。「暗い部屋の窓のシャッターに直径約8ミリメートルの丸穴をあけ、そこに三角柱プリズムを頂点を下に床に平行に置いて太陽光を導入し、その屈折像を約5.5メートル離れた壁に投影したところ、幅は5.4センチメートル、上下の長さは25センチメートルの側面はくっきりした直線状で、上下端はぼやけた長方形に近い長楕円(ちょうだえん)形で一端が赤く、続いて黄、緑、青、紫という順に色づいたthe solar image or spectrumが得られた」という記述があり、そこに突然スペクトルという語が飛び出してくる。

引用元:日本大百科全書(ニッポニカ)

このときのスペクトルの意味は可視光を分解して、波長の順に並べたものに相当します。イメージとしては下に示すようなものであり、これがスペクトルの一例です。

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人の目に見える光は380 nmから780 nmの波長の光といわれています。ちなみに380 nmより波長の短い光は紫外線、780 nmより波長の長い光は赤外線とよばれています。可視光を波長によって分けると、波長によって、赤、黄、緑、青、紫と順に分かれていきます。これはプリズムという滑らかで平行でない平面を2つ以上もつ透明体に可視光を照射することで、波長によって屈折率が異なるため、違う色の光は違う方向に分けられる様子をみることができます。プリズム以外にもこういった現象は起こる場合があり、虹もその一つです。

 元々は可視領域の波長の順に光が分けられたものや、光の波長の順に物質の吸収や発光の強さを示したものをスペクトルと呼んでいましたが、可視領域に限らず、紫外線や赤外線、X線、ガンマ線などの電磁波領域のものを波長順に並べたものもスペクトルと呼ばれるようになっています。

こういったスペクトルの観測は、光を周波数成分にフーリエ分解することで、各周波数成分の含まれる割合を求める方法であると考えることができます。

そのため、電磁波以外のものにも応用され、音波などの振動現象にフーリエ変換を行い、各振動成分の含まれる割合を順番に並べ、グラフにしたものもスペクトルといいます。

さらに、分野によってはフーリエ変換を行わない成分でも、複雑な成分をもつものをその成分で分解し、順番に並べたものをスペクトルと呼ぶようになっています。