化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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デンドリマーの特徴、合成方法について

デンドリマーとは

デンドリマー(dendrimer)は規則正しい枝分かれ構造を有する高分子である。

デンドリマーの語源はデンドロン(dendron)であり、樹木を意味する言葉である。

デンドリマーは合成的に1次元構造から3次元構造までの構造因子が制御された高分子であり、樹木状多岐高分子ともいわれる。

このデンドリマーは、コア、ビルディングブロック、表面の官能基の3つの要素から構成される。デンドリマーの空間形状は、コアとなるユニットの形状を反映して、コーン状、ラグビーボール状、球状、直鎖状などがある。

デンドリマーの特徴

デンドリマーの基本的な特徴は次の5つである。

1. 分子量の分布が存在せず、単一の分子量をもつ。

デンドリマーはモノマーユニット(くり返し単位)を一段ずつ連結して合成していくため、分岐のルールが明確であり、分子量のばらつきがない。

2. コアユニットを反映した三次元的に明確な空間形態をとる。また、世代によって分子サイズを調節できる。

3. ビルディングブロックと表面官能基によって性質が変化する。

溶解性などは、表面官能基によって大きく異なる。

4. 同じ分子量の鎖状高分子と比較して溶液粘度が低い。

5. コアから表面に向かうにつれて分岐の密度がしだいに大きくなっていく。そのため、鎖の自由度は表面近傍ほど小さい。

デンドリマーの合成方法

 デンドリマーの合成方法は大きく分けてダイバージェント(divergent)法とコンバージェント(convergent)法の2つに分類される。

ダイバージェント法は、コアから表面に向かってデンドリマー組織を組み立てていく方法である。ダイバージェント法では、世代が増すにつれて表面の分岐密度が高くなる。そのため、すべての反応性基が必ずしも反応できるわけではなく、構造欠陥を生じやすい。そのため、ダイバージェント法では構造欠陥をもたない高世代のデンドリマーを合成することは難しい。

コンバージェント法は、表面からコアに向かって合成していく方法である。コンバージェント法では、反応性基近傍の分岐密度が常に低く保たれる。そのため構造欠陥が生じにくい。また、構造欠陥が生じても欠陥をもたないデンドリマーとの分子量の差が大きいため、容易に分離することができる。しかし、世代が高くなると、反応基の濃度が低くなるため、反応の完結に時間がかかる。