化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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金属ナノ粒子と表面プラズモンについて

金属と表面プラズモンについて

金属粒子に衝突した光は電子の光励起を引き起こす。生じる光励起の大部分は、金属の価電子帯の電子の集団的振動である。この金属表面の価電子が集団的に振動励起された状態を表面プラズモン(surface plasmon)という。このようなコヒーレントな振動は金属と誘電体媒質との界面で生じる。

プラズモンは縦波であり、光は横波である。そのため共鳴吸収は起こらない。しかし、金属の表面に対して光が特定の角度で入射し、金属表面に平行な方向の波である表面プラズモンの波数と、光のこの方向の波数成分が一致すると共鳴が起きる。

バルク粒子の場合とナノ粒子の場合について

バルク粒子中では、表面プラズモンは進行波である。バルクの金属中で光子を用いてプラズモンを励起するには、プラズモンと光子の運動量が一致する必要がある。このプラズモンと光子の運動量の一致は、光と物質の相互作用が非常に特別な配置である場合に起きる。

金属ナノ粒子の光学的性質は、周りの誘電体媒質の影響を強く受けた複雑な電気力学的効果から生じる。

金属ナノ粒子では表面の割合が大きく、また様々な方向を向いて分布している。そのため、表面プラズモンは局在化しており、特性運動量をもたない。よって、共鳴条件を満たす確率が高くなり、光吸収は強くなる。

プラズモン吸収の特性は、ナノ粒子の大きさと形状だけでなく、金属と周囲の誘電体に強く依存する。

誘電体媒質に分散した金属ナノ粒子の色は、金属と誘電体の界面での電子の集団的振動によって決定される。

表面プラズモン共鳴現象について

金属薄膜を塗布したプリズムに光を全反射角以上の角度で入射させると、プリズム表面において常時発生しているエバネッセント波と金表面において励起された表面プラズモン波が共鳴し、反射光が減少する現象が起こる。この現象のことを表面プラズモン共鳴現象という。

金属ナノ粒子を含む液体やガラスは表面プラズモン共鳴による吸収の影響によって着色する。この効果はステンドグラスとして利用されてきた。

全反射条件で金属表面に光を照射すると、表面プラズモン共鳴が生じる。その結果、共鳴に近い周波数でナノ粒子のすぐ外側に大きな電場が生じる。この現象は赤外吸収やラマン散乱の高感度測定へ応用されている。

また、表面プラズモン共鳴状態は金属表面近傍の屈折率変化に対し高感度に応答する。そのため、表面吸着分子種の観察にも利用されている。