14C年代測定に影響を与える要因
14Cを利用した年代測定法は、考古学の測定などで一般的に用いられている方法です。しかしながら、14Cによる年代測定に影響を与える要因がいくつかあります。14C年代測定によって年代を正しく見積もるには、14C年代測定に影響を与える要因によって補正を行っていく必要があります。
14C濃度の場所による変動
14Cは大気中の窒素と宇宙線による核反応によって生成し、成層圏から対流圏へと移動し、その後地上の生物圏に達します。そのため成層圏では14Cの濃度は高くなり、深海底堆積物では14Cの濃度が低くなります。ただし、一般的に14Cによる年代測定を行う対象は陸上や浅海領域に生育する生物であるため、この影響はほとんど受けません。
海洋リザーバー効果の影響
海水は長い時間をかけて海洋を循環しています。一方、海洋生物は、海水に含まれた炭素を間接的に摂取します。そのため海洋生物の14Cの濃度は海洋に含まれる古い炭素に影響される効果が生じます。この効果のことを海洋リザーバー効果といいます。
同位体効果の影響
13C/12C比は-13%から+4%まで変動することが報告されています。特に軽い元素は数%以上の同位体比のこういった変動が、天然においても起こることが知られています。こういった変動が起こると、14C/13C比も同程度の変動が起こると考えられます。この変動は試料中の13C/12C比の測定によって補正することができます。
14C濃度の年代による変化
14Cは大気中の窒素と宇宙線による核反応によって生成するため、大気中の窒素濃度や宇宙線の強度が変化した場合、14Cの濃度もその影響を受けることとなります。大気中の窒素濃度は、ほぼ一定であると考えることができますが、宇宙線の強度は地球の磁場の強さによって変動する可能性があります。地磁気が強い場合は、宇宙線の量は減ると考えられます。14Cの濃度は地磁気の年代による変化によって、過去6000年間で±5%程度変動したと考えられています。
スーズ効果の影響
人類は産業革命以降、石炭や石油といった化石燃料を大量に消費しています。この結果大気中の14C/12C比が減少する変動が起こっています。これは、14Cが壊変し、14Cを含まなくなった年代の古い炭素を含む石炭や石油が消費されることにより、大気中の14Cの濃度が希釈される効果が生じているためです。この効果のことをスーズ効果といいます。また、石炭や石油などの14Cが全て放射性崩壊することによって、14Cが残っていない炭素のことをdead carbonといいます。
原水爆実験の影響
1954年以降に行われた原水爆実験によって大量の中性子が放出されました。その結果、宇宙線による反応と同様に14Cが大量に生成されました。大気中の14Cの濃度は1959年には約25%上昇し、1963年には約2倍に上昇しました。その後、大気圏での核実験が行われなくなっていったために、原水爆実験の影響は減少していっています。