化学を考えるうえで、絶対に考えないとならないものが原子である。
化学では物質は原子の集合体と考えるからである。
原子について
原子は原子核とその周囲にある電子からなる。
この原子核のことは、核と略されることもある。
原子核はさらに、陽子と中性子からなる。
陽子は正の電気素量をもつ。また中性子は電気的に中性である。
電子は負の電気素量をもつ。また、電子は陽子もしくは中性子の約1/1836の質量である。
電気素量はで表され、その絶対値は1.602×10-19 C である。ここでCはクーロンである。
原子核は正電荷、電子は負電荷をもつ。そのため、原子核と電子はクーロン力でお互いに引き合っている。このことを、電子は原子核によって拘束されていると考える場合もある。これは原子では、原子核が中心にあると考えるためである。
また、原子核の陽子の数が同じで、中性子の数が異なるものを同位体という。
原子中の陽子の数で原子の種類を分類したものを、元素という。原子と元素は意味が違う。
電子と陽子の発見の歴史的な経緯について
19世紀の後半ごろに、低圧での気体の放電実験が盛んに行われた。
これによって、陰極線として観測されていたものが負の電荷をもつ電子の流れであるということが明らかにされるようになった。
負に帯電した電子の存在が考えられるようになると、原子は中性であることから、正の電荷をもつ陽子の存在が予想されるようになった。
わずかに気体が残った真空管中で放電を行うことにより、陽極線が発見され、陽子の存在が確認された。
イオンについて
原子は原子核の陽子と電子の数が等しいため、電気的に中性である。
しかし、この原子から電子を取り除くと、電気的には正に傾き、陽イオンとなる。
原子に電子を加えると、電気的に負に傾き、陰イオンとなる。
原子模型について
原子の状態についてモデルを用いて表したものを原子模型という。
初期の原子模型として有名なものはラザフォード(Rutherford)の原子模型があるが、他にもいくつかの原子模型がある。
- ラザフォードの原子模型:正電荷の原子核の周りを電子が周回する土星型の原子模型。
- トムソンの原子模型:一様に正電荷が分布した球のなかに、負電荷をもつ電子の粒が散らばった原子模型。正電荷をパンとすると、その中に電子を表すレーズンが点在しているブドウパン型。
- 長岡半太郎の原子模型:原子の中央に正電荷を帯びた核があり、その周りを電子が回る土星型の原子模型
- ボーアの原子模型:正電荷をもつ原子核の周りに、電子が特定の半径をもった軌道のみで回転運動をしている原子模型
ラザフォードの原子模型は原子が原子核とその周囲を運動している電子から構成されているというモデルである。
ラザフォードの原子模型では、実験結果と矛盾が生じたため、さらに電子軌道を考えたモデルがボーア(Bohr)の原子模型である。
他にも、上記のように様々な原子模型が考案され原子がどのような状態であるかが考えられてきた。