連鎖反応とは
連鎖反応(chain reaction)について、用語集には、次のような説明があります。
原料となる化合物から生成物が得られる過程がいくつかの素反応の組み合わせによって成立し,一つの反応(連鎖開始反応)が始まると,その生成物(ラジカル,イオンなど)が次の反応を起こして連鎖的に進行する反応.連鎖開始反応,連鎖移動反応,連鎖停止反応などからなる.たとえば,水素と塩素との光化学反応,酸素の存在下での二重結合への臭化水素の付加,燃焼と爆発,重合反応など連鎖反応により進行する反応は多い.
出典:学術用語集 化学編(増訂2版)
つまり連鎖反応とは、文字通り連鎖的に進行していく反応のことです。
水素と塩素の連鎖反応
連鎖反応の例として、水素と塩素から光化学反応により塩化水素が生じる連鎖反応について考えます。
水素と塩素は、気体を容器内で混合しても光のない暗い場所では連鎖反応は起こりません。
しかしながら、水素と塩素の混合気体が入っている容器に光を照射すると、容器内で爆発的に反応が進行し、塩化水素が生成します。
連鎖開始反応
連鎖反応では、まずは連鎖開始反応が起こります。これは、塩素分子が400~430 nmの波長の光を吸収して、塩素原子に解離する反応です。
反応式は次のように書きます。ここで"hν"は光の照射により与えられるエネルギーを、"・"はラジカルであることを表しています。
Cl2 → 2Cl・
もしくはCl2+ hν → 2Cl・
連鎖成長反応
次は連鎖成長反応が起こります。これは、塩素原子と水素分子が反応して、塩化水素と水素原子を生じ、生成した水素原子がさらに塩素分子と反応して、塩化水素と塩素原子を生成する反応です。
この一連の反応が繰り返されることによって、反応がほぼ無限に連続的に進行することになります。
これを反応式で書くと次のようになります。
Cl・ + H2 → HCl + H・
H・ + Cl2 → HCl + Cl・
連鎖停止反応
連鎖反応を進行させる塩素原子同士や水素原子同士が反応したり、塩素原子や水素原子が反応気体中に存在する不純物と反応すると連鎖反応は停止することになります。
この反応は様々な反応が考えられますが、いくつかの反応を反応式で書くと、次のようになります。
H・ + H・→ H2
Cl・ + Cl・→ Cl2
H・+ Cl・→ HCl
光化学反応と量子収率
この反応は連鎖反応ですが、光の吸収によって起こる光化学反応ともいいます。
光化学反応は、分子が光子(光量子)を吸収することで進行します。しかし、光子を吸収した分子すべてが反応するわけではありません。
そこで、吸収された光子によって反応が進行する分子の数を量子収率といいます。この量子収率は反応によって異なりますが、この塩化水素の生成反応では量子収率は105であり、比較的大きい値を示します。