化学を学んでいると、元素や原子、単体という単語を目にする機会が多いと思います。でも、いざ違いを聞かれると、すぐに答えることは難しかったりしますよね。その違いについて整理しました。
元素(element)とは?
物質を構成する基本的な成分を元素という.引用元:文科省”学術用語集 化学編(増訂2版)
元素は成分であるという部分が重要な部分です。元素は次に出てくる原子の種類を表します。また、元素を表す記号のことを元素記号といいます。水素はH、ヘリウムはHeというように表します。また、元素を原子番号の順に並べた表を、元素の周期表といいます。
元素は約110種類が知られています。
原子(atom)とは?
原子は,物質を構成している基本粒子である.
引用元:文科省”学術用語集 化学編(増訂2版)
原子は粒子であるという部分が重要です。原子は物質の最小単位という言い方をよく耳にします。つまり、物質をどんどん分割していったときの、一番小さい粒子が、原子というわけです。この原子が2個かそれ以上組み合わさったものを分子といいます。
単体(simple substance)とは?
1種類の元素で構成される純物質を単体という.
引用元:文科省”学術用語集 化学編(増訂2版)
単体は実際に存在する物質であるということが重要です。もう一つ注意する点は、単体は1種類の元素で構成される物質ということです。2種類以上の元素で構成される物質は化合物といいます。
元素と原子の違いとは?
元素は原子の種類を表しており,元素記号を用いて表記される.
引用元:文科省”学術用語集 化学編(増訂2版)
上の文を補足すると、"元素は、原子(物質の最小単位の粒子)の種類を表す"ということです。多くの原子を約110種類で分類するラベルが元素ということです。
例えば、水素原子は詳細に考えると水素原子の陽子と中性子の数により、軽水素原子、重水素原子(デューテリウム)、三重水素原子(トリチウム)という3種類があります。ただし、これらは全て水素(元素)といいます。
つまり、元素により原子を下のようにラベルわけできるというわけです。
水素(元素)・・・軽水素原子、重水素原子、三重水素原子
ヘリウム(元素)・・・ヘリウム3、ヘリウム4など
元素と単体の違いとは?
元素と単体の違いもわかりにくいですよね。もう一度復習すると、1種類の元素で構成される純物質を単体といいます。元素は原子を分類するラベルであり、単体は、原子で構成されている物質のことをいうわけです。
複数の1種類の原子(元素)で構成されている純物質であれば単体、そうでなければ元素という考えかたもできます。
また区別する際の、考え方の一つとして
〇〇の成分や〇〇の原子とつけて、意味が通るなら元素
〇〇のみの純物質や〇〇の分子とつけて、意味が通るなら単体
ということもあります。
・"牛乳はカルシウムが多い"という文のカルシウムは元素か単体かを考えます。
牛乳中のカルシウムはリン酸カルシウムといわれています。つまり、牛乳のカルシウムは、化合物であり、カルシウムのみの純物質が多いわけではないので、単体というのは間違いということです。このカルシウムは元素ですね。
・"水分子は水素と酸素から成り立つ"という文の水素と酸素は元素か単体かを考えます。
この場合は、水分子は水素原子と酸素原子から成り立つということがわかれば、そこから区別もできます。
"水分子は水素の成分と酸素の成分から成り立つ。"と"水分子は水素のみの純物質と酸素のみの純物質から成り立つ。"の2つの分で考えると、前の文では意味が成り立ちますね。後の文では、水分子が水素分子と酸素分子から成り立つという意味になってしまいますので、文の意味が成立しないというわけです。
・"水を電気分解すると水素と酸素が発生する"という文の水素と酸素は元素か単体かを考えます。
この場合は、発生するものは、水素と酸素の分子ですね。そこから区別ができます。この場合の水素、酸素は分子なので単体です。
原子と元素と単体、最初のうちは区別するには難しいと思いますが、化学と親しんでいくとイメージができて区別もできるようになるのかなと思います。かくいう私も、たまに間違えることはあります。