化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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同位体、核種と関連用語の解説

ここでは同位体、核種とこれに関連する用語の解説をしていきます。

同位体と核種について

まずは同位体の一般的な定義です。

"互いに原子番号が同じで質量数が異なる原子"

他の言い方としては次のものもあります。

"互いに原子核中の陽子数は同じで中性子数が異なる原子"

自然界に存在するすべての原子には同位体が存在します。

例えば、水素(H)には、中性子を持たない1H、中性子を一個もつ重水素(2H, D)、中性子を二個もつ三重水素(3H, T)が存在します。

 次に核種ですが、"原子核の種類"を指します。つまり陽子数または中性子数が異なるか、陽子数も中性子数も異なる各々の原子核を指す言葉です。しかし、原子核中の陽子数と中性子数で区別される質量数が異なる各原子を、個々の独立した「種」と考えて「核種」と呼ぶこともあります。

そのため、同位体と核種が同義語として使用されていることもあります。

同位体を区別する表現の方法として、元素名の後に質量数をつけて表します。(例:ウラン235、ウラン238)他の表現の方法として、元素記号の左上に質量数をつける。

これまでに存在が確認された全元素の同位体の種類は、4000種を超えると言われています。このなかには原子炉やイオン加速器で人工的に合成されたものを含みます。

同位体の種類について

安定同位体(stable isotope):時間が経過しても原子核の組成が変化しない同位体です。

放射性同位体(radioactive isotope):時間の経過に伴い自発的に変化して放射線を放出し、原子核の組成が変化して別の元素に変わる同位体です。変化前の出発核種を親核種、変化後に生じた核種を娘核種といいます。また、天然に存在するものを天然放射性同位体、人工的につくられたものを人工放射性同位体と区別することもあります。

原子核反応について

原子核が変化する現象を、一般に原子核反応といいます。核反応には、さまざまな種類があります。そのなかには莫大なエネルギーの変化を伴うものもあります。特に放射線を放出して変化する核反応を、放射崩壊や放射壊変、放射性崩壊や、放射性壊変、原子核崩壊などの言い方をします。

放射性元素について

放射線を放出して別の元素に変化する元素を放射性元素という場合が多い。しかし本来は、放射能をもつ元素のことを放射性元素と表します。

ちなみに放射能は原子が放射線を放出することができる能力のことをいいます。

放射崩壊の半減期について

化学反応速度論における半減期は、反応物の濃度が最初の濃度の半分に減少する際に要する時間を指します。放射性核種の放射崩壊の半減期は、初めに100個あった放射性核種(親核種)の半数の50個が放射崩壊して別の核種(娘核種)に変わり、親核種の数が半数の50個になるまでに要する時間を指します。

放射崩壊の種類について

α崩壊:原子核からヘリウムの原子核 \rm ^4_2He^{2+}が放出されます。この崩壊では原子番号が2つ減少し、質量数は4つ減少します。

β崩壊:質量数が変わらない放射崩壊です。β-崩壊、β崩壊、電子崩壊の三種類があります。

 β-崩壊:原子核内の1個の中性子が電子1個を放出して陽子に変化する放射崩壊です。この崩壊では原子番号が1つ増加しますが、質量数は変わりません。

β崩壊:原子核内の1個の陽子が、+1の陽電荷を持つ陽電子(電子の反粒子)1個を放出して中性子に変化する放射崩壊です。この崩壊では原子番号が1つ減少しますが、質量数は変わりません。

電子崩壊:原子核内の1個の陽子が電子殻(軌道)の電子1個を吸収して中性子に変わる放射崩壊です。軌道電子捕獲ともいわれます。この崩壊では原子番号が1つ減少しますが、質量数は変わりません。Electron Captureの頭文字をとって、ECと書き表すこともあります。

Γ崩壊:Γ線を放出して、より低いエネルギー状態に遷移する放射崩壊です。