化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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学会発表は口頭発表とポスター発表どちらがいいか・メリットデメリット

研究をして、新しい結果が出ると学会発表を行うチャンスがあるときがあります。学会発表の多くは春季年会や○○討論会といった名前がつけられ、1年に1~2回、特に春季と秋季に開催されるケースが多いです。学会の発表者の募集はその数か月前に行われることが多いため、学会に参加したいと思っている方は登録の〆切などを調べて、指導教員に相談してみましょう。

学会発表には口頭発表ポスター発表のどちらの形式で発表するかを選ぶことができるケースが多いです。ここでは、口頭発表とポスター発表の長所や短所(メリット・デメリット)を紹介します。発表形式を選ぶ際の参考にしてください。

口頭発表の長所

・一度で関連する大勢の研究者に発表ができる

口頭発表は何件かの口頭発表が行われるセッションなどのプログラムが作られ、そこに組み込まれるケースが大半です。学会発表を申し込みした内容などから、似たようなテーマを行っている研究発表でセッションは構成されます。そのため、同じような研究テーマを進めている人や、研究に興味のある人に、一度の発表で研究内容を伝えることができます。また、他の発表者などもいるため、聴衆がいないという状況は、ほぼ起こりません。

・(一般的に)業績として評価が高い

一般的に業績としては口頭発表のほうがポスター発表より高く評価されるケースが多いです。ただし、必ずしも口頭発表のほうが優れていると評価されるわけではないので、参考程度に頭に留めておいてください。

・直前まで準備と確認ができる

基本的にパワーポイントなどのプレゼンテーションソフトを使うため、前日にホテルで確認して修正するということができます。もちろん準備を早く済ませておいたほうがいいのですが、ポスター発表と比較すると、わずかに修正ができる時間が長く確保できます。

口頭発表の短所

・発表時間が短い

口頭発表は7分~15分程度の時間で発表しなければいけないケースが大半です。そのため、口頭発表では自分の行ってきた実験や結果を全て発表する時間はないと考えるべきです。重要な部分だけを伝えることになると考えましょう。

・質疑応答の時間が短い

発表時間と同じように質疑応答の時間も2~5分程度の短いケースが多いです。そのため、充分に議論ができないまま発表が終わってしまう可能性があります。

・(人によっては)緊張する

口頭発表は大勢の前で話すことになるため、そういった場面に慣れていない人は緊張することになります。緊張すると早口になったり、話す内容が思い出せなくなったりするといったことが起こることを想定しておきましょう。口頭発表の場合は特に事前にしっかり練習をしておくことが大切です。

・聴衆の聞き逃しが起きやすい

発表時間が短いため、丁寧に説明を行う時間的な余裕がない場合があります。また、発表者の発表中に質問などが行われることはほとんどないため、聴衆が聞き逃したり、理解できていなくても、そのまま発表が進んでしまうということが起こりやすいです。

ポスター発表の長所

・議論できる時間が長い

ポスター発表の場合は、30分~1時間以上の発表時間が与えられるケースが多いです。そのため、他の研究者と充分に議論をする時間があります。

・積極的に人を集めることができる

口頭発表では、通りかかった人に発表を聞いていきませんかなどと呼びかけることはできませんが、ポスター発表の場合は呼びかけることができます。そうすることで、他の研究者と積極的に議論ができるチャンスを作ることができます。

・様々な道具を使うことができる

ポスター発表では、タブレット端末やノートパソコンで実験の動画を見せたり、実際に実験に使った道具を見せたり、名刺などを配ったりと、ポスター以外の道具も使うことができます。アイデア次第では、口頭発表よりも魅力的に発表ができることになります。また、研究内容をすでに論文などの形式で発表していて、他の研究者に知られても問題がないという場合には、ポスターをA4などに印刷した紙を配ることもできます。上手に使うと、人脈を作ったり、自分のことをアピールすることもできます。

・大勢の前で話す必要はない

口頭発表のように大勢の前で話すということは、ほとんどありません。特に緊張しやすい人はポスター発表のほうが落ち着いて発表できます。

ポスター発表の短所

・発表を聴きに来る人が少ない可能性がある

ポスター発表は多くの人と同じ会場で、ポスターを掲載し、発表を聴きに来る人を待ちます。他の発表者が注目されていると、自分の研究発表を聴きに来る人が少なくなる可能性があります。

・聴きに来た人に臨機応変に対応する必要がある

ポスター発表の場合は、「数分で概要を説明してほしい」と言われることもあれば、「この実験を詳しく教えてほしい」といわれることもあるなど、臨機応変に対応する必要があります。さらに、発表の途中で他の人が聴きに来るというケースも起こります。上手に説明する能力が必要になります。

・(現地開催では)周りの発表で声が通りにくいことがある

現地開催では、すぐ隣でもポスター発表をしている人がいるというケースがほとんどです。そのため、周りの発表や質疑応答の声で自分の声が通りにくくなる可能性があります。日頃、声が小さい人は気をつけておいたほうがいいです。

・(特に現地開催では)長時間立ち続ける場合がある

ポスター発表者は、現地開催の場合は、いつ誰が聴きに来るかわからないため、ポスターの横にずっと立っているケースがほとんどです。当然、疲れがたまります。ただしオンライン開催の場合は、研究室などで座って発表できると思います。

・(現地開催では)早めの準備が必要になる

現地開催の場合は、ポスターを印刷して持っていくケースがほとんどであるため、ポスターを早めに準備して、印刷する必要があります。大学内にA0のポスターを印刷してくれる部署がある場合も多いですが、学会発表が多い季節は他の学生などの印刷が重なり、印刷をお願いしてから、実際に印刷してもらえるまでに時間がかかるということもあります。

・(現地開催では)荷物(ポスター)がかさむ

多くのポスター発表者は、ポスターをA0などの紙に印刷し、それをアジャスターといった筒状のケースに入れて持ち運ぶ必要があります。開催地まで持って運ぶ場合は荷物がかさばることになります。ただし、布地に印刷できる場合は、折りたたんで会場に持っていくということもできるため、紙以外に印刷できないか調べてみることも手段です。