研究発表
大学で研究室に配属された学生は、卒業研究を行った後に、卒業論文の内容について口頭発表を行うようになっている大学などが多くあります。この記事では、研究発表(卒論発表)の準備から当日までのポイントを説明していきます。
発表形式
数年前まではpowerpointなどのプレゼンテーションソフトを用いて、スライド資料を作成し、講義室などでプロジェクターで投影して発表を行うことが一般的でした。
しかし、新型コロナウイルスの流行以降はZoomなどのオンライン上での発表や、オンラインと現地発表のハイブリッド形式での発表も多くなっています。
そのため、事前に発表形式は調べておきましょう。
しかし、基本的に準備内容はプレゼンテーションのスライド資料と原稿を準備することです。
口頭発表でわからない点は研究室の先輩や、指導教員に相談しておくとよいのですが、ここでは筆者の経験に基づいて一般的な内容・ポイントを説明していきます。
発表要旨の準備
一般的に、発表の前に参加者には要旨集が配布されます。要旨とは研究発表の内容についての要約をA4で1枚~2枚程度にまとめたものと思ってください。また書類の様式は学部や学科全体で指定されるため、それに従いましょう。
一般的には
- 上下左右のマージンを25 mm程度
- 要旨集の通し番号を記入するスペースを空ける
- 論文題名・所属・氏名を記入する
- 研究の背景・実験の方法・得られた成果を文章と図でまとめる
要旨の注意点
締切日を調べる
要旨は提出期限が存在することが一般的です。また、提出前には指導教員の添削を受け、指導教員が許可したものを提出する必要があります。そのため、本来の締切日以外に、指導教員への初稿の提出の締め切り日を確認しておくとよいでしょう。
印刷形式を確認しておく
要旨には1枚程度、多くて2枚程度、図を挿入することが多いです。特に印刷が白黒かカラーかによって、図の色を配慮する必要があるため、確認をしておきましょう。
提出様式を確認する
印刷物を提出する場合は白黒印刷かカラー印刷か、電子ファイルの場合はpdfか他のファイル形式かなどを確認しておきましょう。wordで作成してpdfファイルを提出する場合はファイル形式の変換方法も調べておきましょう。
発表準備の注意点
発表はプレゼンテーションのスライド資料と原稿の2種類を準備するとよいです。
発表時間をもとに構成を考える
多くの場合、発表の時間が10分など指定されています。スライド資料は基本的に1枚あたり1分程度と考えることができます。そのため、発表時間から準備するスライド資料の枚数を見積もることができます。
発表の構成は、一般的に
- 発表題目・発表者名
- 研究背景(イントロダクション)
- 研究目的
- 実験方法
- 実験結果と考察
- まとめ
- (謝辞)
の流れで示しましょう。
卒業論文などで、すでに論文を書いている場合は、その構成とほぼ同じになると思います。
この構成を想定しているスライド枚数に対して割り当てることで、どのページのスライドにどの内容を記入するかを考えることができます。
聴衆を想定して具体的な発表内容を考える
学会での発表や、卒業論文での発表など、発表分野の専門性の高い聴衆なのか、研究室配属を控えた3年生といった専門性の高くない聴衆なのかで、説明する内容は大きく異ります。
逆に聴衆の専門領域を踏まえずに発表内容を決めると独りよがりの発表となり相手に伝わらなくなります。
スライド資料準備のポイント
枚数
上でも記入したように1枚のスライドで1分程度と考えて枚数を決めるよいでしょう。また1枚のスライドで言いたい内容(メッセージ)は1枚となるようにしましょう。
フォント
スライドで用いるフォントはゴシック体やarialなどのブロック体のフォントを用いるほうが見やすい資料が作成できます。
逆に明朝体やTimesのようなセリフ体や筆記体などのフォントは読みにくくなるため、使用するのは避けたほうがよいです。
使用する色
まずプロジェクターなどで投影する場合か、Zoomなどでのモニターを通して見るのかで見える色が実際には異なります。特にプロジェクターを用いる発表の場合は可能であれば、プロジェクターで投影してみて色がわかりやすいかを確認するとよいでしょう。
また男性の場合20人に1人程度は先天色覚異常をもっており、赤と緑の見分けが付きにくい人がいるといわれています。余裕がある場合は、カラーユニバーサルデザインといわれるような、色を見分けにくい人でも見分けられるように配慮して配色を選ぶとよいでしょう。
他の一案としては、棒グラフを色で分けるだけでなく、塗りつぶしと網かけ線で分ける、グラフにプロットする点を色だけでなく丸と三角など形を変更し、色以外でも区別するといった方法もあります。
余白
スライドの下にギリギリまで記入していると、プロジェクターに投影した際に前に座っている聴衆で見えないということが起こり得ます。
またZoomなどのソフトの場合は、右側などにギリギリまで書いていると、聴衆の表示形式次第では発表者や司会の画像の表示が重なっているということが起こりえます。
全体的にスライドのギリギリまで使わずに周りに余白をとっておきましょう。
絶対に言いたいことは書いておく
特に発表に慣れていない人は、発表で緊張して話すセリフが出てこなくても、発表ができるように、言いたいこと(メッセージ)は記入しておきましょう。困ったときはそのメッセージを読みあげればいいという心の余裕もできます。
発表原稿の準備のポイント
原稿は1枚目では、なにを言うかをきちんと段落で分けながら書いておきましょう。
人によっては、原稿を作らないという人もいますがが、原稿にしておくことで客観的に見直すことができます。
また、言葉遣いも丁寧にしておき、「です」か「であります」で統一しておくとよいでしょう。
また専門用語は聴衆の専門性の理解に合わせて、適切に専門用語を用いる必要があります。場合によっては専門用語を言い換えたり、専門用語についての説明を一言添えるという工夫を行いましょう。
発表練習
発表の練習は絶対に行いましょう。可能であれば、研究室の指導教員や学生などの前で発表練習会を開催して、コメントをもらい、スライド資料や原稿の改善をしていくと良い発表になります。
また原稿を作成したあとは、読んでみることで、実際に発表中に言いよどまないかも確かめておきましょう。
また、発表練習の際は、時間も実際に計測し、発表時間内に収まっているかも事前に確認しておきましょう。
質疑応答の準備
卒論発表や学会発表の場では、質疑応答の時間が設けられている場合が多いです。特に卒論発表では、学生の考察などを確認するために質疑応答が行われます。
ただし、その質問内容はある程度、想定することができます。先輩に話を聞いたり、日頃のディスカッションを思い出して、どのような質問が来るかと、その質問に対する回答を準備しておくと、安心につながります。
発表当日の準備
服装
日本化学会の春季年会など日本の化学系の学会発表では大半の人がスーツで発表を行っています。TPOに合わせて服装を選ぶと良いが、わからない場合はスーツを着用しているほうが無難です。
持ち物
当日の持ち物は以下のものがあれば、充分です。
- プレゼンテーションのスライド資料
- ノートパソコン
- レーザーポインター
- 発表原稿
- 発表資料のデータの入ったUSBメモリー
特に発表資料のデータはパソコンの不調などにそなえて、USBメモリーなどを持っておきましょう。トラブルが起きたら、座長や前後の発表者などからパソコンを貸してもらいましょう。
コンピューターの設定
パソコンはスクリーンセーバーや自動で電源がOFFにならないか設定を確認しておきましょう。
レーザーポインター
レーザーポインターは電池の予備も準備しておき、実際に使えるか確かめておきましょう。レーザーポインターが使えなくなった場合はpowerpointでは、マウスポインタをレーザーポインター代わりに使うこともできます。
発表原稿
本当に困って頭が真っ白になったときでも発表できるように、原稿を印刷してもっておくといいです。
一般的には原稿は見ずに発表する人が多いですが、研究室によっては原稿を読んで発表することが推奨されるかもしれません。その時も、原稿ばかり見ずに、たまに聴衆を眺めるように発表ができることが理想です。
落ち着いて発表する
慣れてない人は特に緊張すると思いますが、深呼吸をして、大きな声でゆっくり発表をしましょう。
質疑応答の内容をメモする(発表後)
質疑応答で聞かれた内容は研究を発展させるために役立つコメントであることも多いです。忘れないうちにメモしておきましょう。