化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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学会発表向けのポスターの作り方と注意点

はじめに

研究室に配属され、研究を進めると、指導教員や先輩から学会で発表することを勧められることがあります。学会発表が未経験の学生には、まずはポスター発表をしようとなるケースをよく聞きます。ポスター発表のほうが口頭発表よりも敷居が低いケースが多いです。

ここでは、初めて学会発表でポスター発表をする学生向けにポスターを作る際のポイントを紹介します。

基本構成を考える

研究発表の基本構成は研究背景(イントロダクション)、研究の目的、実験手法、実験結果、考察、まとめ(結論)という構成です。自分の研究をふりかえり、それぞれの項目を考えましょう。いきなり考えることが大変な人は、まずは各項目をwordなどを用いて書き出してみると整理できると思います。

ポスターの形式を調べる

ポスター発表のポスターの形式は学会のwebサイトなどに必ず明記されています。ポスターのサイズ縦向き横向きかなどを調べましょう。

ポスターを作成する設定を行う

ポスターはpowerpointなどのプレゼンテーションソフトを使って作成する方法が一番手軽だと思います。もちろん、他にイラストレーターなど使い慣れているソフトウェアがあれば、それを使って作成しても問題ありません。

powerpointであれば、デザインのスライドのサイズのユーザー設定のスライドサイズから表示されているスライドのサイズを変更できます。

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例えば、ポスターのサイズがA0である場合には、幅84.1 cm、高さ118.9 cmを入力すると、実寸サイズのポスターを作成できます。

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フォントはブロック体を選ぶ

どのフォントを使うかは自由ではあるのですが、遠くからでも文字が見えるように、ブロック体(ゴシック、メイリオ、ヒラギノ角ゴシック、arial、Segoe UIなど)を選んだほうがいいです。

また、ポスターで使うフォントは統一しておきましょう。他にはユニバーサルデザイン(UD)のフォントを選ぶと読みやすくなります。

フォントサイズは最低でも20 pt程度は必要です。できれば28 pt以上であれば2 m程度離れたところからでも読めます。

おおまかな目安として、

  • タイトル:70 ~ 90 pt
  • 所属、氏名:40 ~ 60 pt
  • 見出し:60 ~ 70 pt
  • 本文:28 ~ 40 pt

と考えるといいと思います。サイズは実際にポスターを作ってから細かく調整しましょう。

余白をとる

ポスターを作る際はフチに余白を取りましょう。現地開催の学会では、ポスターを画鋲などで留めて掲載することになります。3 cm程度余白があれば、問題ありません。

配置してみて構成を決める

おおまかに各項目をポスター上に配置してみて、構成を考えましょう。最初から一つずつ作り込んでいく方法も悪いわけではないですが、おおまかに配置を決めてから、細かく作っていったほうが、きれいに整理されたポスターができます。

一般的なレイアウトの例を以下に示します。ポスター発表は、他のポスター発表と同時に掲載することになるので、注目を集めたほうが発表を聴きに来る人が多くなります。そのため、一般的なレイアウトにこだわらず、奇抜なほうがいいという人もいます。指導教員や先輩とも相談しながら、魅力的なポスターになるように考えるといいでしょう。例えば、ポスターの背景に色をつけることもできます。

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ポスター配置例

下の例はまとめを上に持ってきた例です。現地開催の場合は、ポスターの下のほうは、通行客などで見にくくなります。そのため、あえてまとめを上にもってくることで、どういう研究結果を発表しているのかを少し遠くの人でも見えるようにアピールする例です。

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ポスター配置例

各項目を作る

配置がおおまかに決まれば、ポスターの作成に取り組みましょう。

原則は、研究の発表スライドを作る場合と同じです。各項目に見出しをつけておくと、どういう順番で読めばいいのかわかりやすくなります。

文章はすべて書くより、必要なことを短く書くと、文字のサイズを大きくすることができます。場合によっては、箇条書きのほうがいいこともあります。

グラフや写真などの図のタイトルは図の下表のタイトルは表の上が原則です。

グラフ以外に写真なども掲載するなど工夫して、周りのポスターと差別化できるように意識するといいでしょう。

色を使うときの注意点

きれいな色を使うと、他の人の目をひくことができます。ただし、色を使いすぎて、カラフルにすると、逆に見にくくなります。ベースになる色を2色程度と、注目してほしい部分を強調する色を1色の合計3色程度を基本として作っていくと、カラフルになりすぎず魅力的なポスターになります。

予備資料・小道具を準備する

ポスターに掲載しない実験結果も議論のなかで必要になるかもしれません。ポスターに載せない結果も印刷して手元に用意しておくといいでしょう。例えばクリアホルダーといわれる透明なビニールのポケットがあるホルダーなどに一枚ずつ図を印刷していれておくと、簡単に聴衆に見せることができます。

特に現地開催の場合は、他にも動画などをタブレット端末で見せてもいいですし、指し棒を準備して、発表中に使うのも自由です。発表がわかりやすくなるように、小道具を準備しましょう。

また、人脈を作ることを意識している場合は、名刺なども準備しておくと配る機会があるかもしれません。また、研究結果を論文などに出版していて、公開していい場合はポスターをA4サイズで印刷したものを配ったりしても問題ありません。

(必要な場合は)ポスターを印刷する

現地開催だと、ポスターは発表者が印刷して持っていくことになると思います。大学などで印刷できるか、もしくは学外の業者に依頼する必要があるかなども事前に確かめておきましょう。

印刷する前にA4に縮小して、印刷してみて、目で間違いがないか確認するとミスが見つけやすいと思います。また、画像が荒くならないかは、縮尺率を実寸にして、画面上で確認しましょう。

印刷の際にPDFファイルに変換する必要がある場合は、一度変換したものをA4サイズで縮小コピーして確認すると文字化けなどのミスに気づきやすくなります。

印刷は余裕をもって、依頼できるように準備をしましょう。

発表の練習をする

発表は、数分(長くても5分以内程度)で一通り発表できるように練習しておくといいです。基本的に聴衆は多くのポスターを見ようと思っている場合が多いので、短い時間で概略を理解させられるように準備しておきましょう。

心配な人は一度、原稿を作ってみてもいいと思います。

(発表後に)質問はメモをする

ポスター発表をすると、いろいろ質問を受けることがあります。質問の内容や議論の内容は忘れないうちにメモしておきましょう。研究をブラッシュアップしていく重要なアイデアになります。