化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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フェルミディラック分布関数(Fermi-Dirac分布関数)の導出

フェルミディラック分布関数の導出

フェルミディラック分布関数 (Fermi-Dirac分布関数) を導出する。

とり得るエネルギーは \epsilon_i (i = 1, 2, ・・・)であるとする。

各エネルギー準位 \epsilon_i g_i個の縮退した状態があり、そこにn_i個の粒子が配置されるとする。ただし、 g_i \gt n_iとする。

そこでエネルギー準位 \epsilon_1g_1個に縮退した状態に、n_1個の粒子を配置する場合の数W_1を考えると次のようになる。

\begin{align} W_1 =_{g_1}\mathrm{C}_{n_1} \end{align}

よって、n個の粒子全てを各エネルギー準位に分配する場合の数Wは、次のようになる。

\begin{align} 
\displaystyle W &= \prod_{i} W_i
\\ &= \prod_{i} \ _{g_i}\mathrm{C}_{n_i}
\\ &= \prod_{i} \frac{g_i!}{n_i!(g_i-n_i)!}  \tag{1}
\end{align}

ここで系のエントロピーに関するエネルギーTS = k_B T \ln Wを最大にする各 \epsilon_iに対するn_iの関係式を求めれば、それがFermi-Dirac分布関数となる。

式(1)の両辺の対数をとり、スターリングの公式を用いてまとめると次のようになる。
\begin{align} \displaystyle \ln W &= \ln \left (\prod_{i} \frac{g_i!}{n_i!(g_i-n_i)!}  \right )
\\ \displaystyle &= \sum_{i} \frac{g_i!}{n_i!(g_i-n_i)!}
\\ \displaystyle &= \sum_{i} (g_i \ln g_i - n_i \ln n_i - (g_i - n_i)\ln(g_i - n_i))
\\ \displaystyle &=\sum_{i} W_i \ln W_i
\end{align}

 ラグランジュの未定乗数法を用いてk_B T \ln Wを最大にする\epsilon_iに対するn_iを求める。

\displaystyle N = \sum_{i} n_i\displaystyle E = \sum_{i} n_i \epsilon_iとすると次のようになる。

\begin{align} \\ \Psi &= k_B T \ln W - \alpha N - \beta E \tag{2}\\ \displaystyle &= k_B T \sum_{i} W_i \ln W_i - \alpha \sum_{i} n_i - \beta \sum_{i} n_i \epsilon_i \\ \end{align}

ここで、

\begin{align} \displaystyle \Psi = \sum_{i} \psi_i \end{align}

として各\epsilon_iに対して、k_B T \ln Wを最大にするn_iと未定な乗数\alpha\betaの関係を求めると次のようになる。

 \begin{align} \displaystyle \frac{\partial \psi_i}{\partial n_i} = k_B T (-\ln n_i + \ln (g_i-n_i))-\alpha - \beta \epsilon_i = 0 \end{align}

 よって次の関係が得られる。

\begin{align} \displaystyle \frac{n_i}{g_i} = \frac{1}{\exp(\frac{\alpha + \beta \epsilon_i}{k_B T})+1} \end{align}

ここで、(2)式の全微分より \beta =1である。

またエネルギーの基準はどこでとってもいいため、 \alpha = - \muとする。そして離散的な\epsilon_iを連続変数\epsilonにして分布関数とすると次の関係が得られる。

\begin{align}
\displaystyle f(\epsilon) = \frac{1}{\exp (\frac{\epsilon - \mu}{k_B T})+1}
\end{align}