化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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超伝導体の性質と臨界磁場・Josephson効果・相転移について

超伝導体と臨界磁場について

超伝導状態が実現するためには、温度Tが転移温度T_c以下である必要があるが、外部磁場にも条件がある。

超伝導体に外部磁場をかける場合を考える。

超伝導体にかける外部磁場を強くしていくと、ある臨界値以上では超伝導状態が破壊され、常伝導状態となる。この臨界値は物質に固有の値であり、これを臨界磁場H_c(T)という。逆に転移温度T_c以下で外部磁場を臨界磁場H_c(T)以下にすると超伝導状態が現れる。

この臨界磁場は絶対零度における臨界磁場をH_c(0)とすると、経験的に下のような温度Tの2次関数で近似される。

 \displaystyle H_c(T) = H_c(0) \left ( 1 - \left ( \frac{T}{T_c} \right )^2 \right )  

第I種超伝導体では、絶対零度における臨界磁場をH_c(0)は数百Oe程度である。この経験則は臨界磁場のパラボリック則ともいわれる。

横軸に温度T、縦軸に磁場Hをとった第I種超伝導体の典型的な相図は下のようになる。

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第I種超伝導体の温度-磁場相図

 

Josephson効果

薄い絶縁体で隔てられた2つの超伝導体の間には、外部電圧が印加されていなくても、超伝導電流が生じる。これを直流Josephson効果という。

また電圧Vが印加されている場合、eを電気素量、hをプランク定数とすると次に示す周波数をもつ交番超伝導電流が生じる。

 \displaystyle  f_J = \frac{2eV}{h} 

これを交流Josephson効果という。

超伝導体と相転移について

超伝導体はマイスナー効果を示す。このことは、超伝導状態が、完全導体の場合とは異なり、温度を下げてから磁場を印加した場合と磁場を印加してから温度を下げた場合で同じ状態となり、その過程とは関係がないことを示している。そのため、超伝導状態が熱力学でいう一つの相であることを意味し、超伝導状態と常伝導状態の移り変わりは相転移と捉えることができる。