化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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電気泳動の原理と分類(ゾーン電気泳動・キャピラリー電気泳動など)

電気泳動と原理

水溶液に電流を流すときに荷電粒子やイオンが電場の勾配に従って動く現象のことを電気泳動という。

電気泳動では、荷電が大きいと、粒子に働く力も大きくなるため、その移動速度は大きくなる。一方で、荷電粒子やイオンの大きさ(分子量)が大きいと溶液中での動きの抵抗が大きくなるため、移動速度は小さくなる。

この仕組みを利用することで、低分子から高分子まで様々な種類の荷電化合物の分離を行うことができる。特に、タンパク質や拡散などの生体高分子の分離では、電気泳動を分離手法として利用することが多い。

電気泳動はその電気泳動の種類によって、分類がされている。大きく分類するとキャピラリー電気泳動とゾーン電気泳動に分類される。

キャピラリー電気泳動法

緩衝液で満たされた内径50 μm程度のキャピラリー内で電気泳動を行う方法である。キャピラリー電気泳動は、特にジュール熱に起因する影響を減少させることができる。また、高電圧を印加することができ、高分解能で、分析時間も短いという利点がある。

キャピラリー電気泳動は、アミノ酸、ビタミン、無機イオン、有機酸、界面活性剤、ペプチド、タンパク質、糖類、オリゴヌクレオチド、DNA制限酵素フラグメントなどの化合物の分析、分取に利用される。

ゾーン電気泳動法

ゾーン電気泳動は、緩衝液の染み込んだ支持体や溶液中で、荷電の違いによって分子の電場における動きの差を利用して、泳動帯(ゾーン)として分離する電気泳動法である。

ゾーン電気泳動法は、さらに支持体によって様々な分類がある。

まずゾーン電気泳動は、支持体を用いる支持体ゾーン電気泳動と支持体を用いない自由ゾーン電気泳動の二種類に分類ができる。

支持体ゾーン電気泳動

 また、支持体ゾーン電気泳動は、その支持体の種類によって、次のように分類される。

ろ紙電気泳動

ろ紙電気泳動は支持体としてろ紙を使用するゾーン電気泳動法であり、ゾーン電気泳動法の中でも手軽な方法の一つである。

寒天ゲル電気泳動

ガラス板に寒天ゲルの薄層を形成して用いる電気泳動である。寒天ゲル電気泳動は、免疫電気泳動にも利用されることがある。

セルロース膜電気泳動

セルロースアセテート膜などを支持体として利用する電気泳動である。血清タンパク質分画などに利用されることがある。

ポリアクリルアミドゲル電気泳動

ポリアクリルアミドゲルは人工合成されたアクリルアミドモノマーを重合して作られるゲルで、性質や重合度の異なる様々なゲルを製作することが可能である。

ポリアクリルアミドゲル電気泳動はタンパク質や核酸の電気泳動に利用される。

また、ゲルの形状によって、ディスク (円筒状) ゲル電気泳動、スラブ (平板状) 電気泳動に分類される。

また、等電点と分子の大きさなど異なる分離作用を利用して、二段階で分離する二次元電気泳動も行われる。

特に、ドデシル硫酸ナトリウムで処理を行うドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) はタンパク質などの電気泳動に利用されることが多い。

アガロースゲル電気泳動

寒天を精製して作られるアガロースを用いた電気泳動法である。通常の寒天よりもゲル強度の強いゲルをつくることができ、DNAやRNAなどの核酸の電気泳動に利用される。

自由ゾーン電気泳動

ゾーン電気泳動のうち、支持体を用いない電気泳動を自由ゾーン電気泳動という。自由ゾーン電気泳動では、支持体の代わりに適当な溶液中で試料の電気泳動を行う。

特に密度勾配を利用する場合は密度勾配電気泳動、等電点を利用する場合は等電点電気泳動といわれる。

両性電解質の電気泳動移動度は等電点で0となるが、電気泳動電極間に両性担体といわれる特殊な緩衝能をもつ物質を加えると、pH勾配をつくることができる。この中で電気泳動を行うと、タンパク質などの両性電解質はpH勾配上の等電点のゾーンまで電気泳動した後、電気泳動移動度が0になり濃縮される。このpH勾配は、ショ糖や電気的中性物質でつくった濃度勾配中に形成される。