化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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1次元の線状高分子の縮合重合反応の解説

縮合重合について

モノマーが重合することによって、ポリマーが形成します。この重合には、縮合重合や付加重合という種類があります。ここでは、縮合重合について解説します。

 モノマーの末端のカルボキシル基-COOHとヒドロキシ基が連続的に脱水縮合反応すると、H-ORCO-ORCO-・・・-ORCO-OHの構造をもつポリエステルが得られる。

モノマーの末端のアミノ基-NH2とカルボキシル基-COOHが連続的に脱水縮合反応すると、H-NHRCO-NHRCO-・・・-NHRCO-OHの構造をもつポリアミドが得られる。

2個の官能基をもつ2官能性モノマーのみが脱水縮合反応してできる高分子は、1次元の線状連鎖縮合重合体となる。

2官能性モノマーと、f個の官能基をもつf官能性モノマー少量が縮合反応すると、多鎖縮合重合体となる。

線状連鎖縮合重合体

モノマー末端の2つの基の脱水縮合反応によってモノマーが1次元連鎖になる場合を考える。2つの基が1つのモノマー末端にあるとき、そのモノマーをABと書くと、縮合反応は次のように書ける。

ABABAB+AB→ABABABAB

ここではこの反応をTypeABと表す。

また、末端基が同じであるモノマー2種類AA、BBが縮合反応をする場合の縮合反応は、次のようにAA、BBが交互に付加反応しながら進む。

AABBAABB+AA→AABBAABBAA 

AABBAABBAA+BB→AABBAABBAABB 

ここではこの反応をTypeAABBの反応と表す。

TypeABの反応について

まず、官能基の縮合反応が起きる確率をpとする。TypeABの反応で得られる高分子の重合について、高分子の重合度がiであるとする。これは確率pで起きる縮合反応がi-1回起きた後に、確率1-pで次の縮合反応が起きなかったということになる。

縮合反応が末端から順番に起こらずに、重合度jのポリマーと重合度i-jのポリマーが縮合しても重合度iの高分子はできる。この場合はi-1の結合部では、確率pで縮合反応が起きている。この事象が起きる確率はp^{i-1}(1-p)である。

ここで高分子を構成するモノマーの数をN_{M}、高分子の数をN_gとする。このとき、高分子の数N_gは、縮合反応しなかった未反応の官能基対の数N_M(1-p)と等しい。式に表すと次のようになる。

N_g = N_M(1-p)

高分子の数N_gに、重合反応が連続してi-1回起こった後に反応が停止する確率p^{i-1}(1-p)をかけると、重合度iの高分子の数N_iが次のように求められる。

N_i = N_g p^{i-1}(1-p) = N_M p^{i-1}(1-p)^2

数平均重合度\overline{Dp_n} \equiv \frac{\sum_{i}N_ii}{\sum_{i}N_i}と高分子の数M_gの積はモノマーの数N_Mであることから、次の関係式が求められる。

\displaystyle \overline{Dp_n} = \frac{N_M}{N_g} = \frac{1}{1-p}

モノマーの分子量をM_0としたとき、重合度iの高分子重量W_iは次のように求めることができる。

W_i = M_0 i N_i

高分子重量W_iの高分子全重量における割合 P_{Wi}は次のように求めることができる。

 P_{Wi} = \frac{W_i}{M_0 N_M} = \frac{iN_i}{N_M}

上の式にN_i = N_M p^{i-1}(1-p)^2を代入すると次の関係が求められる。

P_{Wi} = ip^{i-1}(1-p)^2

これを重量平均重合度の式\displaystyle \overline{Dp_w} \equiv \frac{\sum_{i}iP_wi}{\sum_{i}P_wi}に代入すると次の関係が求められる。

\displaystyle \overline{Dp_w} = \frac{1 + p}{1 - p}

TypeABの反応についてのまとめ

ABABAB+AB→ABABABABの縮合反応をTypeABと表し、この反応が起きる確率をp、この反応が起きず重合反応が停止する確率を1-pとするとき、次の関係式が成り立つ。

重合度iの高分子ができる確率P_i = \frac{N_i}{N_g} = p^{i-1}(1-p)

数平均重合度\displaystyle \overline{Dp_n} = \frac{1}{1-p}

重量M_0 iの高分子ができる確率P_{Wi} = ip^{i-1}(1-p)^2

重量平均重合度\displaystyle \overline{Dp_w} = \frac{1 + p}{1 - p}

また、\displaystyle \frac{\overline{Dp_w}}{\overline{Dp_n}} = 1 + pである。

pは1より小さいため、 \displaystyle \frac{\overline{Dp_w}}{\overline{Dp_n}}は2より小さい。

 数平均重合度の式\displaystyle \overline{Dp_n} = \frac{1}{1-p}はカローザスの関係式(Carothers equation)ともいわれる。この式においてp→1となるとき、\displaystyle \overline{Dp_n} = ∞となる。ただし、実際は重合度が高くなると分子の末端間で反応が起こって環状の高分子となり、分子量は有限である。

TypeAABBの反応について

TypeAABBの反応によって生成する高分子の重合度を考える。

重合反応で生成する高分子の構成モノマーのうち、数の多い方をBBとする。

AAの数をN_A、BBの数をN_Bとする。AAの数とBBの数の比をrとすると次の関係が成り立つ。

\displaystyle r = \frac{N_B}{N_A} \geqq 1

ここでAAとBBが反応する確率をpとすると、反応してABとなっている部分の結合の数はN_A pである。

また未反応の末端AAの数はN_A(1-p)、未反応の末端BBの数はN_B - N_Apであり未反応の末端AAとBBの数について、次の関係を求めることができる。

N_A(1-p) + N_B - N_Ap = N_A (1 - 2p +r)

数平均重合度\displaystyle \overline{Dp_n}は、AABBの数\displaystyle \frac{N_A(1 + r)}{2}を未反応の末端AAとBBの数の半分\displaystyle \frac{N_A (1 - 2p +r)}{2}で割ると得られる。未反応の末端AAとBBの数の半分で割る理由は、1本の高分子は2つの末端をもつからである。

\displaystyle \overline{Dp_n} = \frac{1 + r}{1 - 2p +r}

上の関係式においてr = 1とすると、次の関係が得られる。

\displaystyle \overline{Dp_n} = \frac{1}{1-p}

また、AAとBBが必ず反応するとした場合、 p = 1となり、次の関係が得られる。

\displaystyle \overline{Dp_n} = \frac{r + 1}{r - 1}