水道水は塩素殺菌されている場合が多い。こういった水道水は多くの塩化物イオンを含む。
こういった溶液に含まれている塩化物イオンを定量する方法として、ファヤンス(Fajans)法が知られている。
ファヤンス法について
ファヤンス法は次の流れで行う。
まず、塩化物イオンを含む水に、硝酸銀標準液(AgNO3)を滴下する。
その結果、塩化銀(AgCl)の白色沈殿が生じる。
これにデキストリンを加えると、デキストリンが保護コロイドの役割を果たし、コロイドとなる。
溶液中の塩化物イオンがすべて反応すると、過剰の銀イオンは塩化銀に吸着する。
この銀イオンがフルオレセインなどの色素陰イオンを吸着して、紅色となる。
ファヤンス法で塩化物イオンがすべて反応する終点を求めることができる理由は次の通りである。
塩化物イオンがすべて反応する前は、コロイド粒子の表面は塩化物イオンによって、負に帯電している。しかし、反応がすべて終わり、その後わずかにでも銀イオンが過剰となると、コロイド粒子表面は正に帯電する。
負に帯電しているフルオレセインは蛍光であるが、その正に帯電した粒子に吸着することで紅色となる。そのため、塩化物イオンがすべて塩化銀に反応した時点を正確に知ることができる。
そして、硝酸銀標準液の濃度と滴下量から、塩化物イオンの量を計算することができる。
ファヤンス法を行うことができる条件
このファヤンス法はpH7~10の溶液で行うことができる。
水溶液が酸性の場合は、10%の炭酸水素ナトリウムを滴下して中和することでファヤンス法を行うことができるようになる。
水溶液が強い塩基性の場合は、硝酸を加えることでファヤンス法が行えるpHにするとよい。
ファヤンス法以外の塩化物イオン測定法
塩化物イオンはモール(Mohr)法によっても定量することができる。しかし、モール法は指示薬にクロム酸カリウムを使用する。このため、クロム含有廃液が生じ、処理が必要となる。