化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

タンパク質のN末端アミノ酸決定法 (サンガー法・ダンシル法・エドマン法)

タンパク質のN末端アミノ酸決定法

タンパク質のN末端アミノ酸を決定する方法として、サンガー (Sanger) 法、ダンシル (Dansyl) 法、エドマン (Edman) 法がある。

歴史的には、サンガー法、ダンシル法、エドマン法の順に改良されてきた。

サンガー法 (Sanger法)

サンガー法では、タンパク質に2,4-ジニトロ-1-フルオロベンゼン (DNFB) を反応させてジニトロフェニル化 (Dnp化) タンパク質を分離し、加水分解すると、タンパク質はすべてアミノ酸にまで分解され、N末端アミノ酸のアミノ基のみがジニトロフェニル化 (Dnp化) され橙黄色を示すため、これをエーテルによって抽出すると、N末端アミノ酸はα-アミノ基がジニトロフェニル化 (Dnp化) しているためエーテル層に抽出される。これをクロマトグラフィーによって分離し、可視光によって検出、同定する方法である。

酵素法、ジニトロフェニル法、DNP法ともいう。

ダンシル法 (Dansyl法) 

ダンシル法はダンシルクロリド (5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスルホニルクロリド) をタンパク質に反応させて加水分解し、ダンシルアミノ酸を紫外線 (UV) によって検出する方法である。

紫外線 (UV) によって検出、同定するためサンガー法よりも検出感度が優れている。

DNS法、ダンシルクロリド法ともいう。

エドマン法 (Edman法) 

 エドマン法は、タンパク質にフェニルイソチオシアナート (PITC) を加えて、フェニルチオカルバモイル化 (PTC化) されたN末端アミノ酸をトリフルオロ酢酸によって切断する。N末端アミノ酸はフェニルチオカルバモイル誘導体 (PTCアミノ酸) となり、さらにトリフルオロ酢酸処理によってフェニルチオヒダントイン誘導体 (PTHアミノ酸) として紫外線 (UV) によって検出する。このとき、N末端より第2位以降は加水分解されずに残るため、これを再度エドマン法によって分析できる。これを繰り返し、分解のたびに生成するN末端アミノ酸を順番に並べると、アミノ酸配列を決定することができる。

エドマン法はフェニルイソチオシアナート法、PITC法、PTC法、PTH法ともいい、タンパク質やペプチドをN末端から順次分解する反応であるため、エドマン分解ともいう。

サンガー法やダンシル法では加水分解によって試料タンパク質がアミノ酸まで分解されるが、エドマン法ではN末端アミノ酸1残基のみを遊離させることができ、反応が終了したタンパク質を再利用して、アミノ酸配列を決定できる。特にエドマン法は全自動化され、数十残基を自動で決定できる。この装置はN末端シーケンサーやエドマンシーケンサー、プロテインシーケンサーともいう。