化学徒の備忘録

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イオン化エネルギーと元素の族、周期との関係の解説

イオン化エネルギーと第nイオン化エネルギーについて

イオン化エネルギー(イオン化エンタルピー)は、気体状態の原子もしくはイオンから一個の電子を奪う過程で必要なエネルギーのことである。

この過程は一般的には吸熱的で、エンタルピー変化は正である。

また、気体状態の原子もしくはイオンから一個の最外殻電子を奪う過程で必要なエネルギーのことを第一イオン化エネルギーという。

気体状態の原子もしくはイオンからニ個の最外殻電子を奪う過程のうち、二個目の電子を奪う過程で必要なエネルギーのことを第一イオン化エネルギーという。

同様に、気体状態の原子もしくはイオンからn個の最外殻電子を奪う過程のうち、n個目の電子を奪う過程で必要なエネルギーのことを第nイオン化エネルギーという。ただしnには1以上の正の整数が入る。

原子から電子を奪うと、原子は陽イオンとなる。このとき、外側の電子が核から受ける実行的な正電荷、有効核電荷が大きくなるため、陽イオンが残りの電子を以前よりも強く引きつける。そのために、第三イオン化エネルギーは第二イオン化エネルギーより必ず大きく、第二イオン化エネルギーは第一イオン化エネルギーより必ず大きくなる。整理すると次のようになる。

第三イオン化エネルギー > 第二イオン化エネルギー > 第一イオン化エネルギー

元素の族とイオン化エネルギーの大小

元素周期表で、ある族のうち周期が下に行くとイオン化エネルギーは減少する。これは次のような理由のためである。周期が下にいくと、奪われる電子が主量子数の大きい軌道に収容される。つまり、原子のサイズが大きくなる。そのため、電子は原子核から強く引きつけられなくなる。また、周期が下にいくと、原子核の正電荷はかなり増大する。しかし、外側の電子は内側の電子によって遮蔽されている。そのため、有効核電荷(外側の電子が核から受ける実行的な正電荷)が小さくなる。よってイオン化エネルギーは減少する。

5~12族の元素では、遮蔽効果の低い4f軌道が占有されたあとに続く第6周期元素(Ta~Hg)が各族で最大の第一イオン化エネルギーをもつ。

元素の周期とイオン化エネルギーの大小

同じ周期で周期表を右にいくと第一イオン化エネルギーは増大する。これは次のような理由である。周期表を右にいくと原子核の正電荷が1つずつ増大し、電子が1個ずつ同じ主量子数の殻に入る。同じ殻にある電子は互いを原子核の正電荷から遮蔽する効率が悪い。そのため有効核電荷が大きくなり、電子は原子核に次第に強く引きつけられるようになる。よって、イオン化エネルギーは増大する。

また、閉殻の安定な電子配置から電子を奪うときは、多くのエネルギーが必要である。

例えば希ガスのNeの第一イオン化エネルギーは2081 kJ/molはその次の元素Naの第一イオン化エネルギー502 kJ/molよりも大きい。Naのような1族金属元素は1電子失うと閉殻の安定な電子配置になるので、1族金属元素の第一イオン化エネルギーは小さく、第二イオン化エネルギーは閉殻の電子配置から電子を奪うことになるので、非常に大きくなる。これは1族金属元素が+1の酸化数をとり、+2の酸化数をとらない理由でもある。

同様に、準閉殻の12族元素の第一イオン化エネルギーは比較的大きく、イオン化すると準閉殻になる11族元素の第一イオン化エネルギーは小さい。

元素の周期とイオン化エネルギーの大小の例外

同じ周期内では周期表を右にいく、つまり原子番号が大きくなると第一イオン化エネルギーは大きくなる傾向があるが、Bの第一イオン化エネルギーはBeの第一イオン化エネルギーより小さく、酸素の第一イオン化エネルギーはNの第一イオン化エネルギーより小さい。これは次のような理由である。

Beの2s軌道は2電子で占有されている。一方でBは2p軌道の一つに1電子加えることとなる。よって、核電荷は一つ増大するが、2p電子は内側の2s電子によって遮蔽されるため、軌道のエネルギー準位は2s<2pとなりイオン化エネルギーは小さくなる。

Nは各2p軌道が1電子ずつで平行スピンになるように占有され、交換エネルギーによる安定化を大きく受けている。そのため、この安定な電子配置を崩す第一イオン化エネルギーは大きくなる。Oになれば、原子核の正電荷は1だけ増大するが、2p軌道の1つが電子対をもつ。同じ軌道にある2電子は互いに反発するため、第一イオン化エネルギーは核の電荷が大きいOのほうがNより小さくなる。

Be、B、N、Oの2s軌道、2p軌道の電子配置は下のようになっている。電子とそのスピンを↑と↓で表す。

Be:2s| ↑↓ | 2p |    | |    |  |    | 

B:2s| ↑↓ | 2p |↑   | |    |  |    | 

N:2s| ↑↓ | 2p |↑   | |↑    |  |↑    | 

O:2s| ↑↓ | 2p |↑↓ | |↑    |  |↑    |