電子親和力とは
電子親和力とは気体状態の原子およびイオンに1電子を付加させたときに発生するエネルギーである。
特に、第一電子親和力とは気体状態の原子およびイオンに1電子を付加させたときに発生するエネルギー、第二電子親和力とは気体状態の原子およびイオンに2電子を付加させたときに、2電子目の付加により発生するエネルギーである。
第一電子親和力は周期表の右上にある元素で、エンタルピー変化として最も大きな負である。つまり、これは発熱反応である。
一方で、第二電子親和力と、それ以降の電子親和力はエンタルピー変化としては常に正である。つまり、これは吸熱反応である。
第二電子親和力以降が吸熱反応である理由は、すでに負の電荷を帯びている陰イオンに電子を付加するときは、静電反発の影響を受け、エネルギーが必要となるからである。
また、主量子数が1だけ大きい次の新しい殻に電子を入れる場合も、電子親和力は正になる。これは、弱い核引力と電子間反発に由来する。このため、希ガスの電子親和力は正になる。つまり、吸熱反応である。
電子親和力と周期表との関係
周期表上では、イオン化エネルギーは単純な傾向があるが、電子親和力は単純ではない。まず、電子による原子核の正電荷の遮蔽は完全ではないため、第一電子親和力はエンタルピー変化として負であることが多い。つまり、発熱反応であることが多い。
周期表を右にいくと、有効核電荷が大きくなるので、電子親和力は負に増大する傾向がある。
周期表を下にいくと、核の引力が弱くなるので電子親和力は減少する。これは次のような理由のためである。周期が下にいくと、奪われる電子が主量子数の大きい軌道に収容される。つまり、原子のサイズが大きくなる。そのため、電子は原子核から強く引きつけられなくなる。また、周期が下にいくと、原子核の正電荷はかなり増大する。しかし、外側の電子は内側の電子によって遮蔽されている。そのため、有効核電荷(外側の電子が核から受ける実行的な正電荷)が小さくなる。よって、核の引力が弱くなる。
しかし、原子のサイズが小さい第2周期元素の電子親和力は既存の電子との反発のため非常に小さくなる。例えば、Fの電子親和力はClの電子親和力より小さい。
さらにこれまでの効果に加えて、15族の第2周期元素であるNでは、1電子を受け取ると2p軌道の一つが2電子を収容することになる。その結果、2p軌道での電子間反発が大きくなるので、第一電子親和力は小さい正の値となる。
こういった電子間反発は周期を下がると、軌道が広がるために小さくなる。そのため、15属では一般的な傾向とは異なり、周期を下にいくと第一電子親和力は負に大きくなる。
14族は1電子を受け取ると、15族元素と同じ3つの平行スピンをもった電子配置となる。そのため、交換エネルギーによる大きな安定化が得られるので、第一電子親和力は負に大きくなる。
同じ周期で比べると、14族と15族では、第一電子親和力は14族の方が負に大きくなる。
また1族元素では、1電子を受け取ると安定な準閉殻になるので第一電子親和力は小さい負の値である。2族元素では、エネルギーの高いp軌道に電子を収容するため、第一電子親和力は小さい正の値である。