化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

ゼミで質問が思いつかないときは"なぜ"を活用するといい3つの理由

この記事は研究室やゼミに配属されて日が浅い学生を主な対象にしています。

大学で研究室に配属されると、順番に発表者が教科書の一部の担当部分や最近の論文、本人の研究の進捗などを発表するゼミセミナーなどが実施されていることが多いです。

発表者が内容を文章にまとめたりや発表内容を動画に撮影して共有したほうが、大勢のメンバーの都合を合わせやすいはずですが、あえて研究室のメンバーが集まってゼミやセミナーを行う理由の一つは、その場で質疑応答をすることで、発表者とやり取りを行うことでお互いに理解を深められたり、議論をすることができるからだと思います。

せっかくのゼミやセミナーの場で、一回も質問をしなかったり、一言も発さないというのは、お互いに理解を深めあったり議論ができないという点で好ましくはないですし、質疑応答の練習の機会を活かせてないという点でも非常にもったいないですし、発表者も質疑応答がないと寂しいと感じるでしょう。また、先生や先輩の中には、せっかく入念に準備してきた発表者に、何もコメントや質問をしないというのは失礼だと感じる人もいるかと思います。

ただ、研究室に入りたての頃は、いざ質問をしようと思っても、"なにを質問したらいいかわからない"となる人もいるのではないかと思います。この記事では、そういう初心者にオススメの質問ワードを紹介します。

その活用するといいワードは「なぜ」です。

"なぜ"の使い方

例えば、CO2を銅ナノ粒子を触媒にしてメタノールに還元するという論文の紹介のゼミを想定します。

この時に、発表を聞きながら様々なことに"なぜ"を考えてみて、特に自分がわからないことがあれば、それを質問してみましょう。

例えを以下に挙げてみます。

・なぜCO2を反応させる研究が行われているか?

・なぜ銅を触媒に選んだのか?

・なぜナノ粒子が使われているのか?

・なぜメタノールが生成するのか?

・なぜ論文の触媒は活性が高いのか?

上のように、研究背景、実験方法、結果、考察などの様々な部分になぜという質問を考えることができます。

ここで、なぜをオススメする理由を紹介します。

1. シンプル

5W1Hのように様々な視点から質問を考えるよりも、最初はなぜという1つの言葉をで質問を考えたほうがシンプルです。特に最初の頃は発表で聞く内容自体が初めてのことが多いと思います。そういった情報量の多い中で、とりあえず質問に使いやすいワードを1つ頭に思い浮かべておくのは、比較的簡単な方法です。

その中でも、なぜは比較的応用が利く範囲が広い単語です。

2. Yes/Noのクローズドクエスチョンにならない

質問は大きく、クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンに分けられます。クローズドクエスチョンとは、質問の回答がYes or Noだったり、A or Bのように回答が狭められている質問です。

例えば「この論文で取り上げられている触媒は銅ですか?」といった質問は回答がYes or Noのクローズドクエスチョンです。

一方でオープンクエスチョンは、相手が自由に回答できるタイプの質問です。

例えば「この実験結果について、あなたはどう思いますか?」といった質問は、YesやNoでは答えにくく、自由に意見を回答できるオープンクエスチョンです。

Yes/Noで回答できる質問は、その質問がそこで一区切りつけられてしまい、その後の議論などにはなかなか結び付きにくいです。もちろん自分の理解が正しいかなどを確認するときには使うべき質問ですし、この質問が必ずしも悪いわけではありません。

一方でオープンクエスチョンは、回答者(発表者)の考えや意見が加えられやすく、その回答から議論を行ったり、さらに質問をするきっかけが出る可能性があり、もしゼミやセミナーでどちらの質問をするかであれば、オープンクエスチョンのほうが、より議論に結び付きやすくオススメです。

3. なぜは繰り返すことができる

なぜなぜ分析という言葉を知っている方も多いと思います。トヨタが活用している課題解決の方法の一つで、トラブルや問題が起きた時になぜという質問を繰り返すことで問題の根本的な原因を導く手法です。

このようになぜは繰り返し問うことができます。

例えば、

Q:なぜ銅をCO2還元の触媒に選んだのか?

A:銅はCO2還元の触媒として活性が高いから

Q:なぜ銅はCO2還元の触媒として活性が高いのか?

という具合に、なぜという質問は繰り返して、次の質問に繋げることができます。

このように、最初のなぜという問いは発表者が説明したり、論文やレジュメに回答が書いてあっても、さらになぜと繰り返すことで、自分では回答がわからない質問にたどり着きやすくなります。

そういった質問を行うことで、さらにお互いの理解を深めたり、考えを聞いたりすることができるようになります。

注意点:質問することを目的にしない

ゼミやセミナーでの質問は、あくまで自分の理解を深めたり、深い議論を行うきっかけの1つであり、質問を行うということはゼミやセミナーでの目的ではなく、手段の1つです。

そのため、とにかく質問をすることを目的にしてしまうのは、ゼミやセミナーへの参加の心構えとして、適切な状態ではないため、質問をすることを目的にしてしまわないように注意する必要があります。

また、今回はあくまで質問を考える比較的簡単な手法として、"なぜ"を紹介しています。ただ、周りの先輩や先生の質問は、様々な知識や知見などから考えた質問などもしていると思います。

例えば、

・この合成法ではAという試薬が使われることが多いが、この論文ではBという試薬が使われているけど、この理由はなんでしょうか?

・Figure3の結果から、筆者は銅が触媒として働いているといっているが、Supporting InformationのFigure S5とS7から考えると、表面は酸化銅になっていて、酸化銅が触媒になっているのではないか?

のように、知見を踏まえて質問をしたり、自分の考えを踏まえて質問をしたりして、そこから議論を深めていくケースを目にすると思います。

単純に質問するだけでなく、勉強や経験を積んでいき、さらに深い議論に繋げられるように質問についてもスキルアップしていくことも大切です。