化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【理系】学会発表の準備方法とポイントについて丁寧に解説

学会とは

学会とは、ある共通の研究分野について研究を行っている研究者や、興味関心を抱いている会員によって構成されている組織です。そして、その研究分野の発展や会員同士の交流を図るために、年に1度など定期的に大会を開催しています。「学会で発表した」と言われた時の学会はこの春季年会といった学会の主催した大会のことを指しています。大会では研究者である会員が研究成果を発表し、その成果についての意見の交換が行われます。

卒業研究や高校生の研究だとしても、学会発表に値する内容であれば、その成果を学会で発表する機会を得ることができます。

学会発表の主な目的は、同じ研究分野の研究者に自分の研究成果を発表し、その研究成果に対して専門家から意見をもらうことです。ただし特に若手の研究者には、それ以外にも同じ研究分野の知人を作ったり、専門家に対して自分をアピールする機会にもなります。

また就活を意識して、企業の方と交流する催しや、解析の方法についてのシンポジウムなど学生向けのイベントが行われていることもあります。

一般的に学会発表は口頭発表ポスター発表の2つの形式があります。また口頭発表は発表件数が限られているため、口頭発表者は選抜されることもあります。

口頭発表とポスター発表には、それぞれメリットとデメリットがあります。

口頭発表のメリット

  • 発表を一度に多くの聴衆に聴いてもらうことができる
  • 多くの情報を発表に盛り込むことができる
  • 参加者は聴講するだけで、ある程度の内容を聴くことができる

口頭発表のデメリット

  • 発表時間が決まっているため、長時間の質疑応答はできない
  • 発表中は一方的なプレゼンテーションになるため、基本的に聴衆がどの程度理解できているかをうかがい知ることができない

ポスター発表のメリット

  • 発表者と聴衆の双方向のコミュニケーションで発表することができるため、聴衆のペースに合わせられる
  • 聴衆は、自分の聴きたい発表を厳選して聴くことができる

ポスター発表のデメリット

  • 発表を同じ時間に何度も行う必要がある
  • 発表の途中に新しい聴衆が聴きに来ることがある
  • 基本的に発表時間は短くなる傾向にあり、聴衆は積極的に議論を行わないと得られる情報が少なくなる
  • 多くの発表が同じ時間帯に開催されるため、聴く発表を選ぶ必要がある

学会発表までの流れ

学会に発表する場合は、先輩や指導教員に尋ねることをお勧めします。分野や学会によって作法などが異なることもあります。この記事ではあくまで筆者の経験に基づいて、学会発表までの流れを解説します。

学会発表の申し込み

学会で発表することが決まったら、まずは学会発表の申し込みをすることになります。申し込みは決められた期日までに申し込みをすることになりますが、国内の学会であれば数か月前、国際学会であれば半年以上前という体感です。今は、ほとんどの学会で専用のwebページなどが作られていますので、webページで確認しましょう。

会員資格

学会によって、学会の会員のみが発表できる場合と、他の学会に所属していれば発表できる場合、会員でなくても発表できる学会などがあります。特に会員にならないと発表ができない学会は早めに会員になる手続きをしましょう。

発表申し込みの様式

発表の申し込みはテンプレートが用意されている場合が多く、そのテンプレートにそって、発表を申し込みましょう。

講演題目

参加者は配布されるプログラムを見て、聴きに行くセッション、もしくはポスターを決めます。講演題目は参加者が聴きたくなるように考え、なおかつ発表の内容を端的に表したものが望ましいでしょう。

また研究者としてキャリアを歩もうと考えているなら、研究業績として学会発表のリストを作成する際に講演題目を記入することも多いです。他の方から評価される際の一つの基準になることも意識しておくといいでしょう。

所属・発表者名

発表する研究に関わった共同研究者と、その所属機関を記入します。

場合によっては、学会員の会員番号が必要になることもあります。氏名や所属だから書く内容は決まってると思いこんで直前まで確認をしないのではなく、時間に余裕をもって確認しておきましょう。特に英語で記入する場合は、どこを大文字にするかなどにも注意して記入する必要があります。

講演概要

学会発表をする内容について、説明します。ほとんどの場合、数百字以下と短いので、要点をわかりやすく説明するようにします。

キーワード

講演題目以外に5つ程度、研究のキーワードを書くことができる場合があります。参加者が聴きに行く発表を選ぶ際の参考にするため、よく考えて決定したい項目です。

学会発表申し込みの注意点

締めきりに気を付ける

学会の申し込みには締め切りが設定されています。締め切りに遅れると申し込みができなくなるため、時間に余裕をもって申し込みをしましょう。

通知を確認する

申し込みの受理番号などがメールで通知させるケースが大半です。また、申し込みに失敗している場合や、手続きが完了できていない場合なども通知が来る場合があります。通知はしっかり、確認しておきましょう

交通手段やホテルの予約(現地開催の場合)

学会もしくは討論会は全国各地の大学やホールなどで開催されます。最近はオンラインでの学会やオンラインと現地のハイブリッド開催の学会も多くあります。現地開催の場合は、交通手段やホテルの予約も予約ができるようになったらすぐに予約することをおすすめします。例えば、開催日程中に開催地の近くで他の学会が開催されていたり、アイドルのコンサートなど行われていると、遠方のホテルしか予約できないといった事態も起こりえます。

予稿原稿

多くの発表では、研究発表の内容をA4で1枚程度にまとめた予稿集が作成されます。予稿原稿もテンプレートがある場合がほとんどであるため、テンプレートにそって作成して提出しましょう。

予稿原稿に記入する内容としては

  • 講演題目
  • 発表者と所属機関
  • 研究の背景、理論、目的
  • 実験方法
  • 実験結果と考察
  • 引用文献

などです。予稿は論文と比べると書くことができるスペースが少ないため、基本的に簡潔に書くことを心掛けるとよいです。また載せる図も1枚程度、引用文献も1~3件程度と必要最低限にするようになるようにしましょう。

予稿集の注意点

予稿集の発行で研究成果の公表になる

特に特許を申請することがある場合などは、予稿集を発行された時点で研究成果を公表したことになるケースなどがあります。その場合、日付に注意して、特許を予稿集発行日よりも早く申請するなどが必要です。

文章に推測や予測を加えない

特に学会発表までに実験を追加で行うことを予定している場合では、研究内容が予稿の内容と学会発表の内容で食い違わないように、予測や推測を文章に加えることは控えておいたほうがよいです。

印刷もしくはファイルになった際の仕上がりを意識する

予稿が印刷される場合は白黒印刷となったり、ファイルになる段階でサイズが縮小されることもありえます。特に図がカラーか白黒かは大きく変わるため、事前に確認しておきましょう。ただ筆者の経験では、予稿集は多くの場合、白黒印刷です。

wordファイルで作成してPDFファイルで提出する場合は、PDFファイルに変換した際に、文字化けなどがしてないか確認しましょう。

学会発表まで

研究をさらに進めることができるのであれば、実験を進めていきましょう。学会は化学系だとスーツでの参加が多いので、スーツ一式の準備をしておくといいでしょう。

そして発表のためのデータを用意しましょう。

口頭発表の場合

今はオンラインでの口頭発表と現地での口頭発表の2種類がありますが、どちらについても準備するものが大きく変わるわけではありません。準備するものは発表のプレゼンテーションのデータ資料原稿です。プレゼンテーションのスライドはなるべくわかりやすく、作るようにしましょう。

よければ、こちらの記事も参考にしてください。

また発表のリハーサル、発表練習を行っておきましょう。

ポスター発表の場合

ポスター発表はオンラインと現地開催でもポスターを準備することには変わりはありませんが、現地開催の場合はポスターを印刷する必要がある点に注意してください。

いつまでにどこに印刷を申し込むといいのかは事前に確認しておきましょう。

ポスターも学会などで規定されているサイズや形式に従って、わかりやすく研究内容が伝えられる資料を作りましょう。

また、発表のリハーサルや予行練習もしておきましょう。

他に持ち物としてポスターを入れるケース(アジャスター)や、ポスター以外の手持ちの補助資料、指し棒なども準備しておくといいかもしれません。

発表を終えたら

口頭発表の質疑応答や、ポスター発表でもらったコメントなどを自分の研究に活かしましょう。そのためには、発表が終わってすぐにメモをしておきましょう。