卒業論文とは
大学の3年次や4年次に研究課題に取り組み、その研究結果を論文の形にまとめたものが卒業論文である。多くの大学では、研究室に配属され、指導教員から提案された研究課題に取り組む。
授業である学生実験との大きな違いは、実際に行う実験や測定、反応は既知のものではなく、未知のものでありという点である。ほとんどの場合、世界で初めての実験に取り組むことになるため、その学問の最先端の研究に取り組むことになる。
そのため、卒業論文と授業課題での実験レポートとの違いは以下のような点がある。
- 最先端の未知の事象について実験を行う
- 研究内容が学術的に高度な内容である
- 長期間に行われた実験結果についてまとめる
このような違いに注意しながら、卒業論文を書いていくとよい。
卒業研究はその学生によって行われた研究であるため、基本的に主語は「私」や「著者」英語の場合は「I」を用いる。
卒業論文の構成
卒業論文の一般的な構成は以下の通りである。
- 表紙
- 目次
- 諸元(イントロダクション)
- 実験の原理・実験の方法
- 結果と考察
- 結論
- 引用文献
- 謝辞
特に修士論文や博士論文のような、さらに研究期間が長期に渡る論文では、実験のテーマが複数ある場合もよくあります。その場合は、全体の諸元と結論の間に各章を設けて、「第1章 〇〇に関する研究」などとして、その章ごとに諸元や実験操作、結果と考察などを記入する場合も多いです。
以下では各項目について、説明をしていきます。大学や研究室によって具体的に指示がある場合は、それに従って書いていきましょう。
表紙
表紙には論文の題名、所属、著者名、卒業年度(提出年度)などを記入する。
特に重要なのは論文の題名です。論文の題名は論文の内容を端的に表すものにする必要があります。卒業研究の発表でも聴衆や学生が最初に目にするものはこの研究のタイトルになります。
題名をつけるポイントは
- 論文の内容を端的に表す
- 長すぎず、簡潔にする
- 研究内容のキーワードを入れる
です。
目次
卒業論文はページ数が多くなるため、読者の理解を助けるためにも目次を入れることが望ましい。wordでは見出しなどのスタイルを使って文章を作成しておくと、自動で目次を作成する機能などもあるため、そういったものをうまく活用するとよい。
諸元(イントロダクション)
諸元は卒業研究の位置づけと卒業研究の重要性を表すものである。そのため、諸元を書くためには、研究トピックに関する世界中の論文の動向や、その学問領域における課題などの調査をしっかり行ってから記入することが望ましい。
一般的な構成としては、社会問題のような広い話題から導入していき、その社会問題に関連する自身の研究領域の専門的な課題について取り上げ、研究の目的を説明するという流れである。
また、この研究テーマが他の研究にも与える影響や、実際に多くの研究者が研究に取り組んでいる具体例などを加えて諸元にすると、より重要性を際立たせることができる。
実験の原理・実験の方法
この項目では、実際に行った実験について、その再現ができるように詳細に記述していく必要がある。それに加えて、卒業研究として、学生が高い専門性を有していることをきちんと示すために、実験の原理や測定の原理なども記述する場合がある。
試薬について
試薬は、メーカーや純度、使用前に精製などの操作を行ったかなどを記述する必要がある。
実験操作
実際に行った実験操作を実験ノートをもとに、第三者が再現できるように記述する。
測定と装置
物性などを測定した方法とその際に用いた装置、および装置のメーカーなどを記述する。
結果と考察
卒業研究によって実際に行われた実験の結果について記述する。スペクトルなどの図が得られた場合は、図に通し番号を付けて、記入していく。その際に、その図はどんな測定を行った結果得られた図か、その図のどこを読み取るとどのようなことがいえるか、どういった解釈ができるか、などを記述していく。
そして各実験や測定から得られた結果をまとめるとどのようなことがいえるか、どのような発見があったかなどを記述していく。
結論
研究によって得られた結果を簡潔にまとめる。
これに加えて、得られた研究結果が他に研究に与える波及効果や、現時点で残されている課題や今後の展望などを記述する場合もある。
参考文献
参考文献は本文中に引用番号を括弧を用いて(1)もしくは上付き文字の1のように示し、その一覧を示す。
文献管理ソフトであるendnoteやzoteroなどを用いると、自動で参考文献欄を作成できるため、上手に活用すると良い。
また参考文献の形式は、統一しておく必要がある。指定がない場合は、化学では日本化学会やアメリカ化学会などの書式を用いて作成するとよい。
謝辞
指導教員や研究の協力者などへの謝辞を加える。
一部の研究室では、指導を受けるために指導教員に提出する論文原稿には、謝辞を記載しないという慣例があるという話も耳にしたことがあるため、先輩などがいれば一度聞いてみるとよい。