研究室に配属された大学生や大学院生、研究者を論文を読み、最新の研究成果の知見を得たり分野の動向を把握します。
この多くの論文を読む過程の中で必要な技術の一つに”論文の流し読み”があります。ななめ読みということもあると思います。ここでいう”論文の流し読み”とは論文にざっと目を通し、要点だけを把握することです。また、しっかり読み込む必要のある論文かそうでないかの判断をすることにも繋がります。
"理系研究者のためのアカデミックライティング"という本の中で"論文の流し読み"の方法 (本の中ではプレリーディング技術やスキミングと訳されています)が載っていたため、ここで紹介します。
1. タイトルを読む
出てくるたぐいの情報を予測する
2. 著者の名前を見る
執筆者に関する知識は、内容を予測し、評価する助けになる
3. 日付を確認する
内容評価の助けになる
4. Abstractを読む
研究者がどういうことを行い、発見したかを探す
5. 第1段落に素早く目を通す
すべての語を理解しようとはしない
6. 各パラグラフの第1文を素早く読む
すべての語を理解しようとはしない
7. 図・表をさっと見て、そのタイトルを読む
どのような種類の視覚的データが含まれているかを探す努力をする
8. 最終パラグラフを読む
特にSummaryあるいはconclusionのようなサブセクションがある場合
出典:理系研究者のためのアカデミック ライティング
1. タイトルを読む
論文のタイトルには、その論文がどんな論文か書いてあります。また、論文のどこに新規性があるかを端的に表している場合も多いです。
2. 著者の名前を見る
論文の執筆者に関する知識がある場合、内容の予測に繋がります。この論文は○○を研究している○○研究室のグループの論文という具合に区分できる人もいると思います。
3. 日付を確認する
論文が出版された日付も重要な情報です。論文では、その論文の前に出版された論文や、その論文の後に出版された論文とのつながりまた、研究室などで行われる論文紹介などでは少なくとも2~3年以内、できれば1年以内や、さらに直近の最新の論文を紹介することが求められる場合がほとんどです。
4. Abstractを読む
Abstract (要旨) は、その論文の要約です。雑誌によっては、Abstractには字数制限などがあり、すべての結果は書かれていない場合もありますが、特に著者が主張したい内容は書かれています。このAbstractを読むことで、その論文の中で報告されている内容がわかります。
5. 第1段落に素早く目を通す
多くの場合、第1段落には、研究の背景が書いてあります。これをざっと読むことで、何が課題であるかを掴むことができ、その論文の内容を楽に理解できるようになると思います。
6. 各パラグラフの第1文を素早く読む
これは、論文が"パラグラフ ライティング"という方法で書かれている場合に有効な方法だと思います。パラグラフライティングでは、パラグラフの第1文にそのパラグラフで主張したい内容の要約が書かれます。そのため、パラグラフの第1文だけを読んでいくことで、論文の概要を読むことができるというわけです。
7. 図・表をさっと見て、そのタイトルを読む
図には、ポンチ絵などを使った概要図が含まれている場合もあります。そういった図を見るだけで理解できることが異なると思います。また、実験の結果の図を眺めていくと、どういった測定が行われたのか、どういった試料が使われたのか、なども理解できます。
8. 最終パラグラフを読む
特にSummaryあるいはconclusionのようなサブセクションがある場合は、ここにその論文のまとめや結論が書いてあるということです。それを読むことで、論文の概要を知ることができます。
個人的には、必ずしもこの1~8の通りにする必要があるわけではないと思っています。人によって、自分にあった読み方というものもあると思います。ただ、"論文の流し読み"や”論文のななめ読み”のやり方が分からないという人には参考になる流れだと思います。