3つの中和
一般的に異なる性質をもつものが混ざり、互いの性質を消しあうことを中和という。特に化学では、酸と塩基の中和、正の電荷と負の電荷の中和、毒素と抗体の中和という意味で使われることがある。
酸と塩基の中和
酸と塩基が反応し、酸の酸性、塩基の塩基性が互いに打ち消されることを酸と塩基の中和反応という。
例えば、酸HAと塩基BOHが反応し中和反応が起こると、水H2Oと生成物である塩ABが生じる。
HA + BOH → AB + H2O
このように中和反応が起こると、酸性を示すH+や塩基性を示すOH-が打ち消される。また、この中和反応は、反応速度が大きく、発生する熱量も大きいという特徴がある。この発生する熱量を中和熱というが、希薄な強酸と強塩基の中和反応では酸と塩基の種類によらず、1 mol当たり約58.2 kJである。
塩化水素HClとアンモニアNH3の反応のように水が生じない中和反応もある。
HCl + NH3 → NH4Cl
また酸である炭酸H2CO3と塩基である水酸化ナトリウムNaOHの中和反応では、水H2Oと生成物である炭酸水素ナトリウムNaHCO3が生成する。この炭酸水素ナトリウムNaHCO3がさらに水酸化ナトリウムNaOHと反応し、炭酸ナトリウムNa2CO3となるよに、中和反応が二段階以上で起こるものもある。
H2CO3 + NaOH → NaHCO3 + H2O
NaHCO3 + NaOH → Na2CO3 + H2O
また、このような酸と塩基の中和反応で、炭酸水素ナトリウムNaHCO3のように酸としてのHが残っている塩を酸性塩 、逆に塩基としてのOHが残っている塩を塩基性塩、酸としてのHや、塩基としてのOHが残っていない塩を正塩という。
正の電荷と負の電荷の中和
正の電荷をもつものと負の電荷をもつものが結合したり、電子をやり取りすることで、電荷が消失し、電気的に中性になることを中和という。
この中和は電荷の再結合ということもある。
例えば、原子や分子のイオン化で生じた正イオンが電子や負イオンと反応し、中性の励起状態や安定な化合物を形成する中和が起こる。
毒素と抗体の中和
毒素やウイルス、微生物などが、それぞれに対する抗体と結合することによって、感染性や毒性を失うことを中和という。