化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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ラマン分光分析法とラマン散乱現象

ラマン分光分析法

ラマン分光分析法は分子振動に由来するラマン散乱スペクトルを測定する分析方法である。

分子振動による散乱スペクトルを測定するため、赤外吸収法と類似した測定方法である。

レーザー光を試料の局所部分に照射し、散乱ラマン線を測定することで、局所的なラマン分光を行うことができる。これをラマン顕微鏡 (ラマンマイクロプローブ) という。

 ラマン散乱現象

分子に光を照射しラマン散乱が起きる場合は、照射光である電磁波と分子の振動の相互作用によって分子の双極子モーメントがうなり現象を起こす場合である。

励起光の電場をE = E^0 \cos 2 \pi v_0 tとする。また、分子の双極子モーメントを\mu = \alpha E = (\alpha _0 + \alpha ' \cos 2 \pi v_m t) Eとする。光の電場中における分子の双極子モーメント\muは次のようになる。

\mu = \alpha _0 E^0 \cos 2 \pi v_0 t + A \cos 2 \pi (v_0 - v_m) t + B \cos 2 \pi (v_0 + v_m) t

この双極子の振動モードによる散乱光のうち、第1項によるものがレイリー散乱、第2項と第3項がラマン散乱となる。

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散乱スペクトルのうち、レイリー散乱より長波長 (振動数の低い) 側のものをストークス線という。ストークス線は光のエネルギーが振動エネルギー分減少している。

逆に散乱スペクトルのうち、レイリー散乱より短波長 (振動数の高い) 側のものをアンチストークス線という。アンチストークス線は、光のエネルギーが振動エネルギー分増加している。

通常、強度の大きいストークス線を分析に用いる。

レイリー散乱との差 v_mをラマンシフトという。このラマンシフトをスペクトルの同定に利用する。そのため、レイリー散乱はラマンシフトが0 (cm-1) となる。