化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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連続X線・白色X線と単色化の原理とシリコン結晶の関係

連続X線・白色X線

電磁波のうち、波長が0.01 nm~数十nmの電磁波をX線という。

X線の中でも、制動放射やシンクロトロン放射によって発生する連続スペクトルを示し、光のような広帯域のX線を連続X線もしくは白色X線という。そして、この白色X線から特定の波長やエネルギーのX線成分を抜き出すことを分光や、単色化という。放射光を利用した実験では、放射光の中の特定の波長のX線を利用していることが大半である。

また、X線を単色化する装置をモノクロメーター (単色計) という。

白色X線の単色化

放射光の単色化は主にシリコン (Si) 結晶によるブラッグ反射を利用して行われる。

結晶にX線が入射したときに、格子面間隔をd、X線の波長を\lambda、X線が結晶に入射する角度である視射角を\theta、整数をnとすると、次の式で示されるブラッグの条件を満たしたときのみブラッグ反射が起こる。

2d \sin \theta = n \lambda

つまり、白色X線に対して、格子面間隔dの結晶をX線に対する角度\thetaで設置すると、ブラッグの条件を満たす波長\lambdaのX線のみが回折を起こし、X線の他の波長の成分は直進することとなる。

また、白色X線がある一つの角度から入射されている場合、回折もある一つの角度となるため、平行な単色X線が得られることになる。

また、結晶を回転させることで、X線の入射する角度を変えると、得られる単色X線の波長を変化させることができる。

このようにして、X線の単色化を行うことができる。 

 

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X線の単色化に利用されるシリコン結晶

綺麗な単色のX線を得るためには、完全な結晶を用いて回折を起こす必要がある。もし、結晶が格子面の歪みや格子面間隔が不均一であったり、不純物によって結晶構造が局所的に異なると、X線の当たる場所によってブラッグの条件が異なり、単色X線の強度や波長が均一ではなくなる。

この条件を満たす結晶としてシリコン (Si) 結晶が利用されている。特に浮遊帯域融解法 (FZ法) によって製造される半導体グレードのシリコン結晶は純度が11N(イレブン・ナイン)といわれ、99.999999999%以上の純度で欠陥もほとんど存在しない。

また、シリコン結晶を用いて単色化を行った際に、単色化されない成分のX線が結晶に吸収されることで熱が発生する。そのため単色化を行う際に利用する結晶は、熱伝導率が高く冷却が容易であり、熱膨張率が低い結晶が理想的である。シリコン結晶は熱伝導率が高く、熱膨張率が低いため、こういった部分でも利点がある。