化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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電子軌道の遮蔽と有効核電荷・貫入とは

遮蔽とは

原子は原子核とその周りの電子によって構成されている。

そして原子核と電子の間にはクーロン力が働き、電子は原子核に引き寄せられている。

まずHe原子を考える。He原子は、1s軌道に2個の電子を持っている。そして、この1s軌道の電子は原子核の+2の正の電荷によるクーロン力を感じることになる。

次にLi原子を考える。Li原子は、1s軌道に2個の電子、2s軌道に1個の電子を持っている。この1s軌道の電子が感じる原子核の+3の正の電荷によるクーロン力は、He原子の場合と同じように考えることができる。

しかし、2s軌道の電子が感じる原子核の正の電荷によるクーロン力は、内側の負の電荷をもつ1s軌道の電子によって打ち消され、1s軌道に電子が存在しない場合よりも、2s軌道が感じる原子核の正の電荷によるクーロン力は小さくなる。つまり、内側に電子が存在しなければ、2s軌道がは原子核の+3の正の電荷によるクーロン力を感じるはずだが、実際には+3よりも小さな正の電荷によるクーロン力を感じることになる。

このような、内側の軌道の電子によって、原子核の感じる電荷が小さくなる効果を遮蔽という。

また、遮蔽を考慮して、電子が感じる原子核の電荷を有効核電荷という。

貫入とは

電子軌道は、主量子数が大きい軌道のほうが外側に存在する。例えば1s軌道と2s軌道を比較すると、電気密度が最大の部分は2s軌道のほうが外側に存在する。

しかしながら、電子雲を考えると、2s軌道の電子の密度分布は二重になっており、二重になっているうちの内側の2s軌道の電子は1s軌道の内側に入っている。

このような、主量子数の大きい軌道の電子が、主量子数の小さい内側の軌道よりもさらに内側に入ることを貫入という。

貫入はs軌道だけでなく、p軌道などでも見られる。